<POKEMON> 17
総勢40匹のぽけもん軍団。
対してこちらは当たり前だが、4匹。
圧倒的不利!! ……と思われたのだが…。
「一人頭10匹だな!」
「負けてらんねえぜー!!」
すでに競争状態の幽助と桑原。
そのせいで、やや相性の悪い連中と対峙したりもしているが、今のところ問題なさそうである。
「じゃあ飛影。そっちの毒のみとゴーストタイプよろしく。あ、飛行の連中は、地面攻撃、効かないから」
「フン…」
仏頂面ながら、べとべたーを攻撃し、粉砕する飛影。
いちおう聞いているらしい。
言われたことを無視して、飛行タイプを攻撃をして、まるきり効かなければ、かっこ悪いだけである。
その背後に、ふしぎばなが迫ってきていた。
毒が圧倒的不利になる地面タイプには、草タイプが効果的。
「シャギャアア!!」
なんとも分かりやすい襲いかかる声をあげながら、つるのむちを振りかざすふしぎばな。
しかし、
「……次元は違えど、俺の技を使うのは許しがたいな…」
やや機嫌が悪い蔵馬が放ったかえんほうしゃで、一瞬にして黒こげになったことは言うまでもない。
「それにしたって、蔵馬と飛影はともかく…」
「幽助たちは競争にかまけて、相性をすっかり忘れておるようだな…」
そう。
前記したように、コエンマがため息をついた通り……彼らは相性のことを、すっっっっかり忘れていた。
そのため、
「電気ショックー!! …あ、あれ? 全然きいてねえ!!」
「地面タイプのにどきんぐに、電気が効くかー!!」
「それじゃ、雷ー!!」
「雷も電気だろうがー!!」
…のようなことを頻繁に起こっていた。
最も、コエンマの的確なツッコミは当然のごとく無視されているわけだが。
「全く。桑原の攻撃はあらかた効くとして……といっても、相性がいいヤツに攻撃した方が、てっとり早いんだがな…」
しばし逡巡するコエンマ。
その袖を、ぼたんが引っ張った。
「コエンマさま〜。あっち、もう10匹いきそうですよ」
「は?」
ぼたんに言われ見やった先。
そこでは、
「かえんほうしゃー!!」
「ほのおの渦!!」
と、蔵馬がうつどん・うつぼっと・まだつぼみを焼いている間に、
「…フン」
「ハアッ!!」
技名こそないが、飛影の骨こんぼうと骨ブーメランにて、べとべとん・またどがす・どがーすが倒されていた。
「相性抜群っていうか、二人の動きもいいですね。お互いが何するか分かってるみたい。二人とも後一匹ずつですよ」
……どうやら、数えていたらしいぼたん。
暇だったというのもあるが、まあそれだけ余裕が戻ってよかったということだろう。
ところで、それを聞いたコエンマ。
あごに手を当て、再び逡巡した後、
「それで行くしかないな!」
「はい? それって何です?」
「あのな…」
ぼたんの問いに、耳元でごにょごにょと囁いて返すコエンマ。
まあ耳元でなくとも連中は聞いてはいないだろうが、もう片方に聞かれると…。
じゃまはしないだろうが、協力してくれるかどうかは微妙である。
「確かにそれなら…でも聞きますか? あの二人」
「やるしかないだろう。ということで、頼む」
「は〜い」
コエンマの指示により、ぼたんは少し宙に浮き上がった。
そして、
「高速移動……電磁波!!」
レベルが低く、スピードが全員より遅いため、念のためにあげておく。
そして、電気系まひの技を炸裂!
狙い通り、それは二人の元へ。
「へ?」
「な、何だ!? 体が…」
がくんっとその場に崩れ落ちる幽助と桑原。
というか、桑原は完全に落ちた(そりゃ当然だ。飛んでたんだから)
「ぼ、ぼたん!! つーか、コエンマてめえか!!」
「続いて巻き付くっと…」
「おわっ!!」
ぼたんの尾びれが二人に巻き付き、ずるずるとシールド臨界まで引きずり戻されたのだった。
「何しやがる!!?」(×2)
幽助と桑原の疑問も、最もと言えば最も。
いきなり麻痺させられた上、尾びれで巻かれて引きずられれば、誰だってこう言うだろう、多少の表現の違いはあれど。
「こうでもせんと、お前等、人の話を聞かんだろう」
シールドが境界線となっているため、今のところ殴られる心配がないためか、結構余裕なコエンマ。
ちなみにぼたんは殴られる前に、とっくに天井付近に避難していた(桑原は飛べるが、彼は女の子を殴らない)
「いいか。お前等が相手構わずケンカぶっかけてる間に、あっちは効率よくやって、大分いい調子なんだぞ」
ひょいっと指さした先で、丁度蔵馬がこんぱんをしとめたところだった。
「蔵馬、後1匹だったはずだから、丁度10匹目だな。飛影も今対峙してるヤツで10匹目だ」
「げ」(×2)
流石にこの状況は、頭に血が上った二人としても、流すわけにはいかない。
「浦飯…てめえ、何匹いった?」
「数えてねえよ。おめえは?」
「……」
どうやら聞いておきながら、桑原も数えてなかったらしい。
「えっと、今…7匹残ってる。何度か復活したヤツもいるみたいだけど、単純に考えて、残り3匹ずつだよ」
さっきから座ってずっと数えていたぼたん。
コエンマの命で、少しは動いたものの、間違えそうにもなかった。
「さっさとせんと、残りも全部蔵馬と飛影にやられるぞ。ま、今の適当なやり方では、確実にそうなるだろうがな」
「……」「……」
そういうのを「楽」として受け止めるような連中でないことは、重々承知で言うコエンマ。
こういうプライドを煽り、弱点をちくちくする言い方をすれば、彼らはいちおう言うことは聞くのだ。
「で、どうすりゃいいんだよ」
不承不承という感じではあったが、いちおうコエンマを振り返る幽助。
桑原もしぶしぶ続いた。
「幽助は、ずばっと・めのくらげ・どくくらげをやれ! 桑原は、すぴあー・ふしぎそう・もるふぉんだ! 時間が惜しい! 幽助は雷! その間に桑原は力をためて、ゴッドバード!」
くどいようだが、これでもぽけもん研究所の権威である。
頭脳明晰で、ぽけもんに詳しくなければ、やっていけない世界で生き延びてきたのだ。
当然、こういう時には一躍力を発揮する。
「わーった!! くらえ、雷!!」
ピカ!! ゴロゴロ!! ドンガラガッシャーン!!
いつの時代でも、雷の効果音と言えば、こんなもんだろう。
これを怖がるのは、人間だけではなく、動物もらしいが、果たしてぽけもんはどうなのだろうか?
余談だが、作者宅では人間のみが怖がっていて、唯一の猫は暢気に寝ているというから、一般常識とはアテにならないこともある。
話は戻すが、幽助の発した雷は、何だか通常より妙な歪み方をしているようにも見えたが、意外と的中率はよかった。
命中率70%の技なのに、1発で当たったのだから、むしろいいのだろう。
こうして、どくくらげ共、電気に弱い水・飛行タイプの連中は、雷が怖いとかいうまえに、ものの見事、まっ黒こげの奇妙な物体に変わり果ててしまった……。
「桑原、どうだ!?」
「……よし、行けるぜ!! ゴッドバード!!」
しばし力をためる時間は必要であるものの、威力は飛行系で最大級。
そもそも飛行に弱い草や虫タイプが勝てる相手ではなかった…。
……最も、ゴッドバードって技マシンじゃなかったっけ? とも思うところもあるが…。
あまり突っ込まないで頂きたい。
単純に作者が、おにすずめが覚えられる技が少なく、何度もドリル嘴ばっかりじゃ、つまんないだろうな〜と思っただけなのだから…。
「何ともいい加減な」
「フン。くだらん」
こちら、予定の10匹を再起不能まで叩きのめした二人。
のんびりと墓石の上に腰掛け(随分罰当たりな…)、優しく穏やかに温かく(といっていいものか…)、見守っていたのだった。
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