……え〜、桑原くん。作者のコメントに突っ込んでいる暇があったら、逃げることをお勧めしたい。
それほどまでに、今の桑原の状況は悲惨であった。
しかし、彼に非がないわけではない。
あれだけ馬鹿笑いされれば、どれだけ心が広い者でも、少しは怒るところである。
そして、笑われた当人である幽助は、決して心が広いとは言えなかった。
まあ、大切な女の子を人質に取り、妖怪にしようとした相手であっても、半殺しにした上で女の子も助かった後となれば、あっさりと許している辺り、結構心は広いかもしれない。
が、その後に似たようなことをした連中(朱雀とか朱雀とか朱雀とか…)については、ぶっ殺しているため、そうでもないのかもしれないが。
とにかく、幽助は決して「心の広いキャラ」ではないのだ。
そしてこういう場合、心の広くないキャラのすることといえば、一つ。
「このやろー!!」
バッコーン!!
……といった具合に、さっきから殴られに殴られているのである。
蹴られてもいるし、叩かれてもいるが。
まあ似たようなものだろう。
しかし、飛影も変わったが、幽助もかなり変わってしまっていた。
コエンマが彼に渡した石は、進化をつかさどるもの。
当然、彼は進化した。
それについてはいい。
進化して容貌が変わるのは、ごくごく自然なことである。
たまにほとんど変わらないようなやつもいるようだが、とにかく大きく変化するものも多いのだ。
だが……飛影もそうだが、幽助もまた、まともに進化しなかったのである。
どうやらコエンマが持っていた石は、かみなりタイプに進化する石だったらしい。
通常、いーぶいが進化するかみなりタイプは、さんだーすと呼ばれるぽけもん。
全身は輝く黄金色。
体毛が針のように鋭く、驚いたり怒ったりすると、さながらハリネズミのようにそれらを立てて尖らせる。
最終的にはミサイルのように飛ばすことも出来るらしい。
……が。
それはまともだった場合の話。
幽助が進化した姿は、確かにさんだーすのようにも見えるが、やっぱり大分違うのだ。
まず身体の色は黄金色でない。
なんというか…地面の色のような、噴火した火山のような、秋の夕暮れのような、昭和初期でまだギザギザがあった頃から存在する十円玉のような…とにかくそんな色なのだ。
身体も通常はいーぶいが0.3mで、さんだーすが0.8mなので、かなり大柄になるはずだが、おそらくはそのままだろう。
元々大柄でなかった幽助は、高さが0.25m程度しかなかったが、今もそう大して変わっていないように見える…。
体毛は確かに針のように鋭いのだが、途中で何箇所かカクカクと曲がっている。
いうなれば、いかずちのような感じだろうか。
しかしそれが全身の毛となれば、カクカク具合が微妙に変で、身体全体が妙に波打っているように見える。
これではミサイルのように飛ばしたところで、先端がぷすっと刺さるだけというオチだろう。
そういえば、さっき煙が巻き起こる直前に見えた光の筋……なんだか曲がっているようにも見えたが、これだったのだろうか??
他にも色々違う点はあるようなのだが、とにかく彼の名誉を守るためにも、これくらいで控えていく。
「既に名誉もくそもねえじゃねえかー!!!」
……元々、名誉になど興味もないだろうにとコメントしたいところだが、こういう名誉というものは、地位などのものではなく、いっこ、生き物として男としての、プライドというものなのだろう。
あえてこっそりと書かせていただく。
「…聞いてたら、また怒りそうですね。上のコメント」
「まあな。殴ることに必死になってて、聞いておらんようだが……そろそろ止めるか」
ようやく止める気になったらしいコエンマ。
といっても、そばに行くことはできないので、シールドぎりぎりのところから、なるべく大きな声で、
「幽助! いいかげんにせんと、本当に桑原が死んでしまうぞ!」
某武術会にて言ったのと同じセリフ。
世界が違うが、とりあえず幽助が止まることは証明済みである。
案の定、幽助は止まった。
が、案の定、桑原はぼこぼこの顔で後ろ向きにひっくり返ってしまったのだった…。
「それにまだ終わってないしね」
「フン…」
言いながら、立ち上がる蔵馬と、骨を構えなおす飛影。
その様子を見て、コエンマはいい傷薬を蔵馬に投げた。
全回復には遠いが、それでも参戦は十分できる。
「桑原くんにもお願いしますね」
「わかっとる。最も、ほとんどこれは幽助にやられたもんみたいだがな…」
溜息をつきながら、桑原にも薬をかけた。
その間に、幽助は最前線に立つ。
「ふが?」
「やっと起きたか、桑原。お前も行ってこい」
「行ってこいって……な、なんじゃありゃ!?」
ようやく意識を取り戻した桑原。
(ほとんど三途の川を渡りかけていたことは内緒である)
目の前の光景には唖然とするしかなかった。
老婆がシールドについて黙っていたことも、さっき4匹まとめてシールド内へ入れたことも、驚いたし卑怯だと思ったが…。
今回のそれは、さらに上回るものがある。
「やれ! やるのじゃ!!」
老婆の怒鳴り声で、幽助たちに飛びかかってくるぽけもんは、計算上後2匹のはずである。
あーぼっくとごるばっととげんがー1匹は幽助と飛影で倒してしまったのだから、当初5匹いたのから3匹引けば、自然と答えは出る。
小学1年生の算数だ。
が、しかし……。
「すごい数ですね、コエンマさま。えっと、1、2、3、4…」
「ざっと40ってところだな。さっさと行け、桑原。一人頭10匹だ」
「お、おう」
とにかくこんなところでへこたれているわけにはいかないと、桑原も戦線に加わる。
ぼたんはレベルが足りないと、コエンマに制され、残っている。
4人同時に出ていれば、交代要員にもならないだろう。
「にしても、このシールド。いったい何匹まで同時に出せるんだ?」
「それより、向こうだけパソコンセッティングして、預けてる手持ちぽけもん呼び出せるなんて、ずるいですよ!」
「何心配するな。むしろ、あいつらには好都合だ」
「は?」
きょとんっとするぼたん。
しかし対照的に、コエンマは満足そうに一人うなづいていた。
こちらは最前線。
とびかかってきたぽけもん総勢40匹。
あーぼ・あーぼっく・うつどん・うつぼっと・くさいはな・げんがー・ごーす・ごーすと・こくーん・ごるばっと・こんぱん・ずばっと・すぴあー・どがーす・どくくらげ・なぞのくさ・にどきんぐ・にどくいん・にどらん♂♀・にどりーな・にどりーの・びーどる・ふしぎそう・ふしぎだね・ふしぎばな・べとべたー・べとべとん・まだつぼみ・またどがす・めのくらげ・もるふぉん・らふれしあ…。
中には、先ほどのげんがーのように、2匹以上いるものもいる。
「…あれ? 3人目って、ゴースト専門じゃなかったですっけ? あーぼっくとかが例外なだけで。毒専門になってません?」
「赤と緑では、意外とゴーストタイプのぽけもんが少ないからな。そのせいと作者の知識不足だろう」
「確かに…書いてるぽけもんの順番が、五十音順ってだけで、何か見ながら書いたのは一目瞭然ですよね〜」
…ほっとけ…。