<POKEMON> 6

 

 

 

ドオオオオオン!!!

 

 

突如、響き渡る爆音。
同時に周囲の檻という檻の扉が開け放たれた。
檻だけではなく、トラックの扉も。
昨日のうちから積まれていた連中もいたのだろうが、その掛け金も全て外されていたのだ。

そう、全ての檻が開かれたのである。
全てということは、つまり……

 

 

「よし、今だ!!」

他の檻が開くのと、ほぼ同時にコエンマの目前の扉もまた開いた。
幸い、多少の距離があったため、開いた扉で顔面強打とはならなかったが、それどころではない。
いきなり開いた扉に、唖然としないわけにはいかなかった。

「え? え? か、鍵まだ開いてなかっ…」
「軽く火の粉であぶれば、あの程度の鍵なら、開きますよ。昨日からついさっきまでずっとやっていたから、出来たんですが」
「……もしかして、それ触ってたら、火傷してたんじゃ…」
「してました」
「……」

ついさっき銃で撃とうとしていたのだから、当然軽くは触れる結果になっていたはず……。
そういうことなら、もっと真剣に止めて欲しかった……思わずにはいられなかったが、そうのんびりもしていられないらしい。
同時に、檻の中から出てきたろこんの蔵馬の美しさに見惚れたいところだが、そんなヒマもないらしい。
ついでといってはなんだが、桑原が何故か捕まる前よりもボロボロの恰好で出てきたのも、気に留めているわけにもいかないらしい。

が、最後の一つは聞かないわけにもいかない。
ずっと声がしなかったから、てっきり蔵馬と桑原だけだと思っていたのだが……。

 

 

「何だ、まだいたのか」

桑原に続いて出てきたぽけもん。
獣の頭蓋骨を被った茶色い少年。
コエンマの問いかけには答えず、元の顔なのか、それともコエンマの問いが気にくわなかったのか、仏頂面で横を過ぎ去ろうとする。
が、その行く手を阻むように、幽助が声をかけた。

「おい、おめえ待てよ」
「……何だ」

相変わらず不機嫌そうな顔で振り返った視線の先には、何やら嬉しそうな顔をしている幽助。
その意図が読めず、しかしあまり気にしてはいなさそうに、からからは睨み付けてきた。
しかし、幽助にはむしろその射抜くような視線が気に入ったらしい。

 

 

「俺は浦飯幽助。おめえは?」

「……飛影」

 

 

ある意味、二人の世界に入っているような雰囲気の幽助と飛影(決して怪しい意味ではなく…)。
その光景を横で見ている三人の心中といえば、

「(幽助が名前を聞くとはな〜。ま、強そうだしな。気に入ったんだろうな)」
「(飛影が名乗ってる。ということは、嫌いなタイプじゃないのかな。強そうだし)」
「(何で、名前聞くんだ! 何で、名前言うんだ! あいつら、俺に対する態度とえらい違いじゃねえかー!!)」

……と、各々様々らしい。

 

 

 

「……とりあえず、自己紹介も終わったところで、いいかな?」

ふいに蔵馬がぽんぽんっと手を叩きながら、二人の間に割って入った。
そうでもしなければ、今すぐこの場でおっ始めそうだったからに他ならない。
蔵馬に言われては仕方がないと思ったのか、飛影も骨を握る力を抜き、幽助も踏みしめていた足を軽くした。

 

 

「見ての通り、この状況だから。早く逃げた方がいいよ」
「……これはどういうことだ?」
「見ての通り、ですよ」
「見ての通り…か」

確かにまあ……見ての通りではあるだろう。

 

開け放たれた檻からは、様々なぽけもんたちが飛び出し、全速力で逃げ出している。
特に方角は定めていないようだが、とにかく逃げている。
大概は自分の身を守りながら、自分だけが逃げることを考えている。
時たま、親しいぽけもんと気遣い合いながら逃げる者もいたが、怪我などを負っている者は不思議といないらしく、誰も彼もが自力で逃げおおせているようだった。

それだけなら別にいいのだが……彼が目の色を変えて逃げるのにも、ちゃんとワケがあるのだ。

 

爆音と共に立った数え切れないほどの火柱。
炎が竜巻のようになり、空へと吸い込まれていくものもある。
時折吹き荒れる突風は熱気が篭もって熱く、下手に吸い込めば、喉が火傷しそうだった。

これでは逃げるしかない。
幽助たちが倒した人間やぽけもんたちも、ようやく起きあがってきたらしいが、しかし現状に慌てふためき、逃げたぽけもんたちどころではなく、思い思いの言葉を叫びながら、慌てふためいている。
もちろん、ほとんどのぽけもんは主を捨てて逃げてしまったが。

 

 

 

「……もしかして、これやるつもりだったのか? 最初から」
「あいつもえぐいことするな……」

確かにこれなら、アジトは全滅するし、ぽけもんは助かる。
加えて、移送するはずの今日にやれば、運び屋連中も始末出来る。
一石二鳥といえばそうなのだが……。

 

「……なあ」
「はい?」
「これで……終わりじゃないな」

こういう時は、自分が嫌だと思うくらい、察しがよくなってしまうコエンマ。
それを初対面であるにも関わらず、蔵馬は気付いてしまったらしい。

 

「……勘がいいんですね」
「これだけなら、お前がわざわざ捕まっていたらしいことに繋がらない」
「え? お前、わざと捕まってたのか?」

素っ頓狂な声を上げたのは、桑原。
まだ事の大きさに気付いていないらしい。
最もそれはコエンマ以外の幽助や飛影にしても、同じ事なのだが……。

 

 

「……俺の役目はここで情報を集めること。それは全てこの炎に載せて、送っています。最後の実行するのは、きゅうこんの…仕事だから……」
「! あいつ何する気だ!?」

蔵馬の眉間にシワが寄せられ、言葉に辛苦の色が伺える。
そのことでようやく幽助にも、きゅうこんが危険な目に合うであろうことが分かった。
彼と面識のない桑原や飛影の心中にも、何となく危ない予感がしている。

そんなところに、蔵馬は真剣な目で飛影を見据えた。

 

 

「飛影。君なら知っているよね? ここに秘められた力に……」
「……ぽけもんの笛、か」
「ああ」

「何だよ、それ…」
「……この塔に封印されていたものだよ。連中はここをアジトにするのと同時に、笛を手に入れようとしている。いや、もう手に入れている。それを取り返すのが、きゅうこんの役目だ」
「連中の手に渡るとマズイのか? そんなに大事なもんなのか?」

マズイからこそ、わざわざろこんの蔵馬が捕まってまで情報を集め、きゅうこんの蔵馬がおそらくは我が身の危険を顧みず、取り戻そうとしているのだろうが、聞かずにはいられなかった。

 

「簡単なことさ。ぽけもんの笛は、ぽけもんを操る力がある。例えどれだけ強力なぽけもんであっても……連中の手に渡すわけにはいかない」
「なるほどな……」

それはマズイ。
かなりマズイ。
自分たちが操られる対象になるかはともかく……いや、ならなかったとしても、操られている相手と闘うことになるのかもしれないと思うと、それだけで気分が悪くなった。

 

 

 

「最も、使い方にはコツがいるから、手にしたからって、すぐに使えるわけじゃない。だからこそ、今の内に取り戻す必要があるんだけどね」
「なら、俺たちも行った方がいいだろ。あいつ強ーけど、そんなたいそうなもん取りに来てんだったら、ろけっと団の連中も強ーぽけもん連れて…」
「強いよ、みんな。だから、きゅうこんは差し違えようと…」

「差し違え!!?」

蔵馬を除く全員が同時に叫んだ。
幽助やコエンマだけでない。
きゅうこんの蔵馬とは会ったことすらない、桑原や飛影もである。

 

「あいつ馬鹿か!?」
「何でそこまで…たかが笛とは言わねえけど、でも笛だろ!? そんな…」
「命と秤にかけることかよ、そいつ馬鹿だろ!!」
「……」

ぎゃーぎゃーと怒鳴っている幽助たちを尻目に、くるっと方向転換したのは、骨をぐっと握りしめた飛影。

「何処へ?」

幽助たちが怒鳴ってくるのを、やんわりと避け、尋ねる蔵馬。
視線だけこちらへよこした飛影は、何処か怒っているようだった。

 

 

「……笛は最上階だ。行く」

それだけ言って、スタスタと炎に包まれつつある塔へと歩いていく。
それが段々と早足になっていって……しかし、煙に巻かれて見えなくなる前に、他の全員も走り出していた……。

 

 

 

 

 

〜作者の戯れ言・中間編〜

……どんどんオリジナル要素満載になってきて、すいません…。

実際、プレイしたのって、もう何年も前の話なんで、正確には覚えてなくて。
かといってやり直すヒマもなく……攻略サイトさまに足を運びつつ、書いてます。
最近、ファイアレッドとか色々出てきてますが、私がやったのは、赤・緑のみのため、ポケモンや技の多さに唖然…。

ちなみにポケモンの笛は、上記のような効力はありませんので。
ただ、寝てるポケモン起こすだけですので、間違ったご使用はされないように(笑)