<眠れる森の桑原くん 1>

 

 

 

  昔々、あるところに……で始まるのといえば、普通おじーさんとおばーさんが出てくるお話ですけれど、今回もまた違います。

 

 思い起こすこと、1年半ほど前。
 どっかのブログにて数日間連載していた「オカシな可笑しなお菓子な噺」。
 ノリとしては、あんな感じです。

 割とバタバタ書き散らしただけなのに、意外にも受けがよかったので(いいのか!?)

 

「……んな理由で、二番煎じやるのかよ……」
「ネタが思い浮かばないわけじゃないんだけど、形にならないんだって。久しく、オールキャラの長い話書いてないから」

 最近、オリキャラ部屋に勤しんでたんだから、しょうがないじゃないですかっ!

 

「それも禄に更新してないけどね」

 ……悪かったですね!!
 行数もったいないんだから、さっさと本編に入って下さい!!

 

 

 

「本編ね……今回はえっと『眠り姫』……あ〜っ、どんな話だっけ??」

 ぼたんさん、知らないんですか??

「だ、だってあたい、人間界の童話なんて、メジャーな『白雪姫』と『シンデレラ』くらいしか知らないよ!」

 ……『眠り姫』だって、かなりメジャーですけど。

 

「『ディ○ニー』のビデオしか見たことのない管理人には、人のこと言えないんじゃないですか?」
「何か違うのか? 他のと」

「かなりね……オリジナル要素が多すぎて、原作からは相当かけ離れているんですよ、あの映画」

 ……というのは、結構大きくなるまで知りませんでした。
 でもって、↑の通り、原作はまともに見たことがないため、『ディ○ニー』主体で行きたいと思います、あしからず。

 

 

 

「ほ〜、で? どういう話なんだ?」
「……幽助も知らないのか?」

「「「知らん」」」

 何か声がハモりましたね。
 ステレオどころか、三重奏ですね。

 

「……つまり、幽助だけじゃなく、飛影はまあ分かるとして、桑原くんも知らないのか?」
「知らねえよ。大体、今時の日本人は、自国の輝かしい童話さえ、ろくに知らねえんだぜ? 外国のを知ってるわけねえだろ」

 あ〜、それって、名前は知ってても、ストーリーを知ってる人は、10人に1人もいないってやつですかね?

 

「……ああ、『金太郎』か。そういえば、そんなこと前にテレビでやっていましたね」

 随分前の話ですけどね。
 『トリ○アの泉』ってので、アンケートとってみたら、ほとんどの人が他の話とごっちゃにしてて、まともにストーリーを知らなかったみたいです。

 

「桑原くんは知ってるの?」
「……半分くらい」

「か〜、だらしねえな桑原! そんなことも知らねえのかよ!」
「あんだとー! じゃあ、浦飯てめえは言えんのかよ!?」

 

「おうともよ! 桃から生まれた、コブのあるウサギとカメが、臼とハチと栗と一緒に、にぎりめしが転がった先のお椀の舟で、竜宮城に行って、最後に機織りを覗いちまったが、子供があるから勘弁してもらえて、月に帰るっつー話だろ!」

「……幽助。いくらなんでも、ゴチャゴチャ混ぜすぎだよ、それ……」

 蔵馬さん、溜息。
 そりゃ、『桃太郎』と『こぶとりじいさん』と『うさぎとかめ』と『さるかに合戦』と『おむすびころりん』と『一寸法師』と『浦島太郎』と『鶴の恩返し』と『ゆきおんな』と『かぐや姫』を混ぜる人、あんまりいませんからね……せいぜいが、『桃太郎』と『浦島太郎』くらいまでで。

 

 

 

「なら、蔵馬は知ってんのかよ!?」

「もちろん。そもそも、『金太郎』は坂田金時という人物の幼名で、諸説あるけれど、幼い頃から足柄山に母親と2人で暮らしていた。童話では、よくクマと相撲を取って負かし、背に跨って馬の稽古をしたことになっているね。そして、足柄峠にやってきた源頼光に力量を認められて、家来となり、京に上る。そして、当時都を騒がせていた酒呑童子を退治した…と、まあこれくらいかな」

 

「……あのさ、蔵馬」
「何? ぼたん」
「金太郎って……本当に居た人だったワケ??」

「今でも議論されていることだよ。居たという人もいるし、伝説にすぎないんじゃないかという人もいる。まあ、1000年も前の話だしね。真実なんて、誰にも分からないよ」

 

「え〜、でも蔵馬は当時もう産まれてたんだろ?」
「……まあ、そこそこの年だったけど」

「知らないのかい? ホントのところ」
「さてね」

 真実はそれこそ闇の中……ですか。

 それはそうと、今回は『金太郎』じゃなくって、『眠り姫』なんですから!
 早いところ、進めてください!

 っていうか、進めますよ!?
 いいですね!

 

 

「え、ちょいと! まだどんな話なのかも聞いてな……」

 しつこいですが、これは昔々、あるところに……で、始まり、おじーさんとおばーさんが登場しない話です。

「無視した……」
「……まあ、しょうがないよ。さっさとやろう……」

 

 

 

 真っ先に登場するのは、とある国の王様とお后様です。
 はっきり言って、端役ですので、配役当てません。
 まあ、王様はそこそこ台詞ある方ですが、とりあえずカットいたします。

 2人には長い間子供が出来ず悩んでいましたが、とうとうある時、願いが叶ったのでした。

 それはそれはタマのように可愛らしいお姫様の名前は……桑原くんと言いました。

 

 

「…………。…………。……はああぁああぁぁあああぁぁーーー!!!???」

 現状を察するのに、大分時間かかったみたいですね。

 

「かかるも何もねえ!! 何で俺が『お姫様』なんだ!? ぼたんも雪菜さんも呼んでんだろ!?」

 いや〜、リクエストはギャグ≠ネので!
 ギャグに走るとなると、意外な人が意外な役をやるのが、一番でしょう?

 

 

「俺に女装しろってのかー!!??」

 女体化よりゃマシでしょ?
 設定では『お姫様』でも、びらびらのドレス着用予定でも、男のまんまにしてあげてるんだから。

「そういう問題じゃねえええぇー!!」

 まあ、そうカッカカッカしないで。
 それはそうと、他の皆様、随分静かですね。

 

 

「……はっ! やばかった。今、リアルに審判の門が見えたぜ」
「俺は地獄の入り口まで見えましたよ」
「な、何とか三途の川ですんだよ……」
「……鬼ががなっているのが見えた」

 なるほどなるほど。
 それだけショックだったってことですね〜。

 でも、もう配役決めちゃってるんで、このまま行きます。
 よろしいですね?

 

 

「いいわけねえだろ!!」
「もうちょっと配役考えて下さい…(怒)」
「殺すぞ…」

 え〜?
 じゃあ貴方方がびらびらドレス着るんですか?

 

「…………。よし、行くか!」
「行くとしましょう」
「さっさとな」

「裏切りもーん!!(号泣)」

 桑原くんの叫びはともかくとして、話を進めます。

 

「おい、こらっ!! ちょっと待て、管理に…」
「うるさいよ、桑ちゃん。今は赤ちゃんの役なんだから、大人しくしてて」

「『姫』っつーのも気にいらねえが、『赤ん坊』役もふざけるなっ……」

 

 ゴィン

 パタ

 

「ひ、飛影…(汗)」
「さっさと終わらせるぞ……こんな下らんこと、二度と付き合わされんようにな……」

「……既に、他の話でも配役までは終わっているらしいけどね」
「抹消しろっ!!」

 まあ、気が向けば。
 それはそうと、本題に入りますね。

 

 

 念願叶っての『お姫様』が生まれ、国は沸き立っていました。
 王様と王妃様は、姫の健やかな成長を願い、国の外れに住まう妖精たちも呼んで、『贈り物』をしてもらうことにしました。

 妖精たちは快く承諾して、姫の生誕パーティへやってきました。

 名前は、蔵馬さんとぼたんさんと幽助くんと言います。

 

 

「これまた微妙な配役で……」
「んで? 何すりゃいいんだ?」

 まあ適当にステッキでも分回しといて下さい。
 重要なところは、蔵馬さんにやってもらいますから。

「へいへい」
「ほいっとね!」

 

 幽助くんとぼたんさんがステッキを振り、蔵馬さんがお姫様に近づこうとした、その時でした。
 突然、室内が真っ暗になり、紅い絨毯に暗い影が落ちました。

 皆が驚いている中、影はゆっくりと形になり……そして、1人の妖精が現れました。

 

 

「…………」
「おい、飛影。お前だろ、次の台詞」
「……フン、下らん」

 はいはい分かりました。
 台詞ナシでもいいですよ、解説しますから。

 

 その妖精は禁断の森と呼ばれる城に住んでおり、とてつもなく強力な魔力を秘めていますが、反面人間には『黒い妖精』と呼ばれ嫌われており、今回の宴にも呼ばれておりませんでした。
 所謂、招かれざる客というやつです。

 元々こういう派手な騒ぎは好きではないのですが、のけ者にされたというのは、気に入らなかったようで、こうしてやってきたのであります。

 

 

「……何故、呼ばれなかった程度で怒る必要がある」
「まあ、飛影ならそうかもしれないけど、そう思わない人も世の中にはいるってことですよ」

 そういうことです、ハイ。

 とにかく呼ばれなかったことに腹を立てた黒い妖精は、生まれたばかりの姫に呪いをかけたのです!

 

「呪い……顔が『失敗面』になる呪いか?」
「ええ〜、違うでしょ。それを言うなら、『長く見るには耐え難い顔』じゃないのかい?」

「ぼたん。あの時、会場にいましたっけ?」
「後からビデオで見たよ。すっごくすっごく納得した」
「俺もな〜」

「て、てめえらなあーっ!!!」

 ゴキン

「赤ん坊は寝てろ」

 飛影くん、何気に酷いですが、ばっちりですよ。
 呪いらしい呪いのポーズです。

 

「あ〜、確かに」
「これ以上はねえってくらいだな」
「呪いというよりは、呪詛にも近いですが……」

 ま、確かに。

 

 

 それはそうと呪いの方ですが。
 その呪いは『失敗面』になるわけでもなく、『長く見るには耐え難い顔』になるわけでもなく、16の誕生日に糸紬の針に指を指して死ぬ…というものでした。

「……何で、針刺したくらいで死ぬんだ?」
「猛毒でも塗ってある設定なら、不自然じゃないですよ。一撃で仕留める毒針くらい、推理小説では当たり前の小道具ですから」
「これ推理小説じゃないだろ?」

 そんな高度な話、管理人に書けるわけないでしょ……。

 そして、呪いをかけた黒い妖精は、高笑いを浮かべながら消え去りました。

 

「ほら、飛影。高笑いして」
「……面白くもないのに笑えるか」

「では、飛影。桑原くんの顔をどうぞ」

 

「…………。ははははっ!!!」

 中々いい笑いでしたね、飛影くん。

 ということで、呪いなんて可愛らしいものではなく、呪詛の如き恐ろしい代物をかけられちゃった桑原くん。
 嘆き悲しむ王や王妃、国民の皆様でしたが、そこへ救世主が!!

 

「さてと。それじゃ、やりますか」

 まだ贈り物をしていなかった妖精さんが1人だけいました。
 言うまでもなく、蔵馬さんです。

 

 こんな重要な役所、他の人に出来るでしょうか?
 いいえ、やらせるわけにはいきません!

 映画では一番小柄でおドジな妖精さんが配役されていようが、関係ありません!

 

 とにかく目立つ、重要所は全て蔵馬さん!
 これぞ、蔵馬ファン歴十数年の意地!!

 ご都合主義も好み贔屓も知ったこっちゃないのです!

 

 

「……本当に、蔵馬が好きだよね。管理人……」
「ああ。他の漫画に流れていようが、BL天国だか地獄だか落ちようが、NLオンリーの蔵馬からは離れられねえんだからな……」

 いや〜、何故か幽白はBLに走らないんですよね。
 飛蔵も蔵飛も連載終了十数年経った今も、大人気CPだと分かってはいるんですが。

 ……公式で「俺にはそういう趣味はない」と言い切っているにもかかわらず。

 

「……さっさと先に進めるけど?(怒)」

 あ、はい、どうぞっ!!

 

 

 

「……黒い妖精の呪いを解くことは出来ません。けれど、例え針に指を指されたとて、命が絶たれることはないでしょう。深い眠りにつくことになるでしょうが、何時の日か呪いを解く誰かが訪れるはずです……」

 澄んだ曇りなき、同時に威厳に溢れる声。
 ステッキを振るたびに靡く長い髪は、神々しい中にも妖しさのある美しさ。

 

 ……ああ、やっぱり配役ミスりましたかね。

 蔵馬さんがお姫様の方が……

 

「遠慮します(きっぱり)」

 さいですか。