<壺の悪魔>
わたしの名前は、狐白(こはく)。
白狐の末裔のお母さんと、銀狐の生き残りであるお父さんから生まれた、ハーフ。 でも、見た目は白狐に近いみたい。 それでも、お父さんの銀の輝きには勝てない。 私も……双子の兄の狐鈴も。
けれど、そのことを実感することは、一年の内、ほんの一時だけ。 闇の世界からの追っ手を回避するために、お父さんと狐鈴は旅に出ているから。
……だったんだ。
「狐白。支度出来た?」 「うん」
といっても、荷物は最小限。 衣装は、この間ブオーンを倒した時のもの。
狐鈴は今までのが一番気に入ってるって、そのまんま。
「ね、狐白。鍵持った?」 これだけは絶対に忘れちゃダメだから。
え? 家の鍵じゃないよ。
この鍵は……これから先、きっと必要になるものだから。 闇の世界との、『光の教団』との闘い。
お父さんは盗賊で色々詳しく知っている。 何でもほとんどの扉を開けることが出来るものだって。
薔薇さんに会ったら渡しなさいって、お母さんがわたしに預けてくれた。 お父さんたちが持っていてもいいけれど、盗賊として万が一捕縛された場合を危惧してだって。
そして、今日。 もう待っている必要なんてない。 お父さん、お母さん、狐鈴、そしてわたし……。
皆で一緒に旅に出る。
もちろん、危険はつきまとう。 闇の世界からの刺客、たくさんのモンスター、そしてお父さんを狙う人たちも。 もう待っていたくない。
曾御爺様や御祖母様に反対されるかと思ったけど、2人ともすぐに納得してくれた。 わたしたちには言わないでっていうのを、こっそり聞いちゃったけど。
ああ、愛されてるな。 狐鈴と2人、改めて思っちゃった。
莉斗兄ちゃんは、ちょっと青くなっていたけど、もう反対しても無理なんだって分かってくれたみたい。 薬草とか毒消し草とか、山のように渡して、 「皆が元気で帰ってくるの、待ってるからね!」 泣きそうな顔で、手を握ってくれた。
うん、絶対に帰ってくるよ。 だってここが、わたしたちのうちなんだもん!!
そして。
「行こう! 狐白!」 手を繋いで、駆けて行く。
わたしたちの冒険が、今、はじまった。
終
*後書き* 最初、スパファミでやった時には、ブオーン一瞬で負けました(爆) 「あれ? ブオーンってこんなに弱かったっけ??」 という、ゲームがド下手な管理人としては、あり得ない事態を引き起こしました(おい…)
次回は、第6章。
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