<壺の悪魔>

 

 

 

 わたしの名前は、狐白(こはく)。

 

 白狐の末裔のお母さんと、銀狐の生き残りであるお父さんから生まれた、ハーフ。

 でも、見た目は白狐に近いみたい。
 白狐と銀狐の違いは、わたしにはよく分からないけど、髪の色や獣耳・しっぽの色が、お母さんのに似ているから。
 お母さんよりも、ほんのちょっと銀色が強いみたいだけれど。

 それでも、お父さんの銀の輝きには勝てない。
 本当に、降り積もった雪に満月の月明かりが差し込んだような色をしている。
 とても敵わない。

 私も……双子の兄の狐鈴も。

 

 

 けれど、そのことを実感することは、一年の内、ほんの一時だけ。

 闇の世界からの追っ手を回避するために、お父さんと狐鈴は旅に出ているから。
 本当に、時々ふらりと戻ってくる、その時だけ……

 

 

 

 ……だったんだ。

 

 

 

 

 

「狐白。支度出来た?」

「うん」

 

 といっても、荷物は最小限。
 ほとんどお父さんが持ってくれてるけど、自分たちのものは出来る限り、自分で持とうって、狐鈴と2人で決めたから。

 衣装は、この間ブオーンを倒した時のもの。
 リボンだけ新調しちゃった。
 もちろん、防御力UPの魔力が込められている特注品。

 

 狐鈴は今までのが一番気に入ってるって、そのまんま。
 ただ、ブーツは大分すりへっていたから、それだけ交換したんだって。

 

 

 

「ね、狐白。鍵持った?」
「持った持った!」

 これだけは絶対に忘れちゃダメだから。
 なくさないように、紐に通して、首からかけて、服の中に隠してあるの。

 

 

 え?

 家の鍵じゃないよ。
 だって、おうちには御祖母様と曾御爺様がいるから、鍵をかけていく必要はないもん。

 

 この鍵は……これから先、きっと必要になるものだから。

 闇の世界との、『光の教団』との闘い。
 ついに、わたしもその闘いに、参加できることになったんだ!

 

 

 

 

 お父さんは盗賊で色々詳しく知っている。
 ブオーンが倒れたそこに落ちていたのを拾ってくると、それは『最後の鍵』と呼ばれる、盗賊の間では有名な鍵だって教えてくれた。

 何でもほとんどの扉を開けることが出来るものだって。
 そういえば、薔薇さんも鍵を持っていたけど。
 あれは全部じゃないって言ってたから、これは絶対に要るはずだから。

 

 薔薇さんに会ったら渡しなさいって、お母さんがわたしに預けてくれた。

 お父さんたちが持っていてもいいけれど、盗賊として万が一捕縛された場合を危惧してだって。
 わたしだったら、身体検査なんかされないもんね。

 

 

 

 

 そして、今日。
 わたしたちは出発する。

 もう待っている必要なんてない。

 お父さん、お母さん、狐鈴、そしてわたし……。

 

 皆で一緒に旅に出る。

 

 

 もちろん、危険はつきまとう。

 闇の世界からの刺客、たくさんのモンスター、そしてお父さんを狙う人たちも。
 それでも、わたしたちは行くんだ。

 もう待っていたくない。

 

 

 

 曾御爺様や御祖母様に反対されるかと思ったけど、2人ともすぐに納得してくれた。
 ブオーンを倒しにいったことも、知ってたみたい。

 わたしたちには言わないでっていうのを、こっそり聞いちゃったけど。
 後を付けて、階段の影で、何かあったらすぐに動けるようにしていたんだって。

 

 ああ、愛されてるな。

 狐鈴と2人、改めて思っちゃった。

 

 

 莉斗兄ちゃんは、ちょっと青くなっていたけど、もう反対しても無理なんだって分かってくれたみたい。
 何度も何度も、気をつけてって言ってくれた。

 薬草とか毒消し草とか、山のように渡して、

「皆が元気で帰ってくるの、待ってるからね!」

 泣きそうな顔で、手を握ってくれた。

 

 うん、絶対に帰ってくるよ。

 だってここが、わたしたちのうちなんだもん!!

 

 

 

 

 

 そして。

 

 

 

「行こう! 狐白!」
「うん!!」

 手を繋いで、駆けて行く。

 

 わたしたちの冒険が、今、はじまった。

 

 

 

 終

 

 

 

 

 

 *後書き*

 最初、スパファミでやった時には、ブオーン一瞬で負けました(爆)
 その記憶が残っていたのか、プレステ2(私が持っている、唯一のプレステソフト)で闘いを挑む際、最後の鍵が必要になるギリギリまで行かず、レベルも攻略レベルを遙か上回るものにしていたせいか……一度も誰もダウンすることなく、はっきり言って、回復魔法もたまにしか使わずに、圧勝。

「あれ? ブオーンってこんなに弱かったっけ??」

 という、ゲームがド下手な管理人としては、あり得ない事態を引き起こしました(おい…)
 仙水のゲームってこんな感じなんですかねー(流石に最高レベルじゃなかったけど、似たようなものかな)

 

 次回は、第6章。
 いよいよ、天空城が空へ戻ります!