<4 トロッコ>
「あぎゃああああああああ!!!!」
「…………」 「…………」 「…………」
呆気にとられる……とは、まさにこのことだろうか? 目の前で繰り広げられる光景に、親子3人、全く同じ顔をするというのは……もしかしたら、初めてかもしれない。
サラボナを出発してすぐ、3人は蔵馬のルーラで、海辺の修道院という所へ向かった。 「そういえば、海辺の修道院にいた頃、近くの山に登った時、見たことがあるよ。遠くの大陸に、おっきな湖があるの」 言われて、地図を確認したところ、その修道院から湖までの距離は、エルヘブンからと大して変わらない。
母親の故郷だからと、蔵馬が行きたいと言うかと思ったのだが、彼は何も言わずに、ルーラを唱えた。
「本当に便利だね。この絨毯」 海辺の修道院から、例の湖までは、銀色から譲り受けた絨毯に乗った。 実際、高い山は越えられなくとも、海上を飛ぶ分には、船よりも便利で。
「「「…………」」」 広い広い湖の中央付近。 明らかに、自然のものでないモノが、あった。
「……城だね」 この状況で、実は違う城でした……などということはないだろう。 つまり、上から落ちた……としか、考えられないのだ。
「じゃあ、行こうか」 「そんなことしないよ。ほら」 蔵馬が指さしたのは、湖のすぐ脇に、小さくぽっかりと開いた洞窟だった。
「……罠じゃないのか?」 泳げないことはない。 というより、おそらく100%の確率でいる。 もっと楽に行ける手段があるならば、多少うさんくささがあったとしても、そちらを行くしかないだろう。 憮然としながらも、碧は洞窟へ向かって歩を進めた。
……洞窟の入り口は思ったよりも狭く、通りにくそうで。 「これ……やっぱり、罠かもね」 「だって、ほら。どの石も切り口がまっすぐだ。人工的に作ったのじゃないと、こんなの無理だよ」 壁に触れながら、碧は言った。
「……トロッコ?」 ぐるっと周辺を見回しただけで、どうやら構造が理解出来たらしい。
「乗ったことがあるのか? コレ」 黙ったのは、そういう意味じゃなかったのだけれど。 見た目は自分たちよりも、少し年上なだけなのに。
何だか……もやもやして仕方がないのだ。 言えないけれど。
その後、蔵馬の的確な指示により、碧たちはもちろん、モンスターも総出でポイントを切り替え。 それでも、この洞窟の広さを考えると、ものすごくあっさりと先へ進めた。 なのに、素直になれないのは何故だろうか?
(……兄さんはそれでも、尊敬してるっていうのが、分かるのに……) 兄の父を見つめる眼差しは、尊敬と憧憬に満ちている。 そんな紅光の心中を、蔵馬は敏感に感じ取っているらしく、苦笑すると同時に、少し楽しんでいるようでもあった。
でも、碧を見る時は……何処か、困ったような、そんな顔が多い。 そんなに困らせていない、と思う。 なのに……どうして、あんな顔をするのだろうか?
あれこれ考えていても、埒が明かない。 地下4階くらいだろうか? トロッコが動く音がした。
不審に思いつつ、音源を探すと、やはりそれはトロッコで。 冒頭の叫び声は、乗車している彼のもの。 その必死な叫びと様子に、親子は唖然とするしかなかったのである。
「……どうする?」 言って、蔵馬は近くのポイントレバーを見やると、すかさずリオが飛んでいって、引っ張った。 ガチャン 今までよりも、大きな音を立てて、ポイントが切り替わり……というか、半ばポイントが壊れ。 トロッコは木っ端微塵。
「……死んだ?」 「おい、おめえら!! 何だその言い草はっ!!!(怒)」 蔵馬の一言に、倒れていた人物は、がばりと起き上がった。
「よく生きてたね、あれで」
「おめえらなーっ!!!(激怒)」
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