番外編
〜ひとときの安らぎ〜
わたしの名前は、狐白(こはく)。
白狐の末裔のお母さんと、銀狐の生き残りであるお父さんから生まれた、ハーフ。 でも、見た目は白狐に近いみたい。 それでも、お父さんの銀の輝きには勝てない。 私も……双子の兄の狐鈴も。
けれど、そのことを実感することは、一年の内、ほんの一時だけ。 今日はその限られた日なんだ。
「まだかな、まだかな」 後ろからお母さんが言うけれど、わたしの興奮は収まらない。 でもでも、それくらい楽しみなんだ。
だって、莉斗兄ちゃんが言ってた。 それで、「近いうちに帰る」って言ってたって! こんなに約束がはっきりしていることなんて、滅多にないんだもん!
今日は約束の十六夜の日。
「……あ! 見えた!」 街の門に上っていたら、遠くにちらっと影が見えた。 珍しく徒歩ではなく、馬に乗っている。
「お父さん! 狐鈴!!」 わたしは真っ直ぐに駆けだした。
「狐白!」 馬上まで一気にジャンプして、狐鈴に抱きついた。
わたしの半身。 やっと会えた。
「元気そうだな、狐白」 見上げたお父さんも、いつものお父さんだ。
「蔵馬、狐鈴。お帰りなさい」 気づいたら、お母さんが来ていた。 手綱はもちろん持ってくれている。
「瑪瑠。久しぶり。変わりはないか?」 お母さんは、ほうっと溜息をついてる。
お父さんと狐鈴は、二人で世界中を旅してるから。 ……仕方のないことだけれど、でも心配だよね。
「狐鈴? 寝ちゃったの?」 お屋敷に戻って、庭でひとしきり遊んだ頃、お母さんの膝から寝息が聞こえた。 外は流石に上着がいるけれど、お屋敷の中庭は結界もあって、ほんのりあったかい。 そう思うと、ちょっとだけ寂しかった。
「疲れているのよ。狐白、しぃー」 そうだよね。
「お父さん。今回はどれくらい居られるの?」 期待を込めて言ってみたけれど、 「長くて3日だな」
たった3日だけ。 狐鈴、起きないかな。
「狐白? 貴女も眠たいんじゃない?」 そう言ったけれど。 (ねむ…い……) 狐鈴が起きた時に、わたしが眠くちゃ遊べない。
……目が覚めたのは、もう夜になっていた。 「起きた?」 ぴょんっと二人一緒にベッドから降りると、わたしたちの寝室と続いているお母さんたちの寝室へ。
「起きたのか」 わたしが指さしたのは、テーブルの上に置かれた大きな箱。
「どうするの? それ」 お父さんとお母さん、それに狐鈴を交互に見た。 ずるい。
「狐白。ぼくが知ってるのは、ずっとお父さんと一緒にいたからだよ?」 苦笑気味に言われて、そういえばそっかと、少し恥ずかしくなった。
「狐白にも隠すつもりはない。元より、話しておかなければならないことかもしれんしな」 そう言って、お父さんは話してくれた。
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