<4 最後のオーブ>

 

 

 

 地下から戻り、例の石像の元へ。
 左右にそれぞれ『竜の目』をはめこむと、石像が揺れ、口元から通路が現れた。

 

「こんな仕掛けだったんだ」
「どういう趣味なんだろうな、神様ってやつは……」

 もうちょっと古代の遺物のようなイメージがあっただけに、落胆は隠せない。
 ユニークといえばそうだけれど、神様の威厳も何も、あったもんじゃないような……。

 

 

「考えていても仕方がない。行こうか」

 ゲマたちがいなくなった後も、その残り香のせいか、塔全体の異様な空気は消えなかったのに。
 石像内に入った途端、それは一掃された。

 モンスターたちは一匹もいない。
 また、空気がとても新鮮で、神聖だった。

 あんなおかしな入り口のわりには、中は神域といっていいくらいに。

 

 

「おそらく、ゲマたちが目を奪っていったのは、此処へ入れなかったからだろう。本当なら、マスタードラゴンの力そのものを持ち帰りたかったんだろうけどね」
「そっか。邪気のあるモンスターには入れないから、鍵だけ持ち帰ろうとしたわけか」

 妙に納得のいく答えを導き出して、一行は内部を進んだ。
 途中、またあのロープが役に立ち、階下へ降りる。

 狭い部屋に、扉が1つ。

 

 この中に何かある。

 もはや、本能的に感じ取っていた。

 

 

 

 そして……あった。

 

 

 

「ドラゴンオーブ……とでも呼ぶべきかな」

 

 床一面に描かれた、巨大な竜の絵。
 その中央で、ぽつんっと佇む台座。

 青い光を放つ、丸くて小さな物体。

 だが、そこから流れ出るオーラは、ゴールドオーブと比較しても、圧倒的な力を放っていた。
 これ一個で、天空城は遙かなる高みまで舞い上がれるのではないかと思ってしまうほどに。

 

 そっと蔵馬が手にのばすと、オーブは拒否する反応もなく、彼の手に収まった。

 

 

「……どんな感じ?」
「うん……そうだな。何だか、落ちつく感じがする」

 言いながら、蔵馬はソレを息子たちに差し出した。
 2人は一瞬顔を見合わせながらも、揃って受け取ると、父と同じ気持ちを抱いた。

 

「……本当だな」
「落ちつく……でも、変な感じもする」

「ああ、何となく分かるよ。妙な感じもするね」

 くすくす笑う蔵馬。
 ここへ来てから、こんな砕けた表情は初めてかも知れない。

 

「やっぱり、不思議な玉だね」

 でも、感謝はしたい。
 そう思った。

 

 

 

 

 

 その後、石像内部を探索した結果、ドラゴンの杖なる武器を手に入れ、蔵馬は久しぶりに剣以外の武器を装備した。
 塔から出るまでにも、モンスターの襲撃を受けたが、彼には使えぬ武器はないのではというくらいに、あっさりと使いこなしている。

「……何か面白くない」
「まあまあ……」

 むっつりする碧に、紅光は苦笑するしかなかった。

 

 

 そして、ようやく塔から脱出。
 ドラゴンオーブという収穫を得て、これでまた一歩、母に近づけたのだ。

 意気揚々と天空城に帰ろうとして……城がないことに気づいた。

 

 

 

「……誰か移動させたみたいだな」
「仕方ない。ルーラ」

 蔵馬の呪文で、全員が宙に舞い上がる。
 次の瞬間には、天空城へ戻っていた。

 

 そこでは、おどろくべきことが待っていた……。