11.おばけじょう
「暗いね」
はぐれぬよう、2人手を繋いで、城を進んでいく。 元々は人間が住まっていた城なので、構造はそれほど複雑ではない。 ぼんやりとうろつくお化けキャンドルを頼りにしている状態。 無論、そんな穏やかな連中ばかりでないことも。
殺意むき出しに襲いかかってくるものもいたが、新調したばかりの武器であっても、蔵馬の敵ではなかった。 そして、トドメは全て蔵馬がさしてゆく。 やはり彼に絶たれたモンスターたちは……綺麗になって消えてゆくことが。
(蔵馬は……やっぱり、『特別』だね) 消えゆくにしろ、魂が最期、輝いているのが見える。 そう考えると、襲いかかってくるモンスターたちは生きているだけで苦しいのだろうか?
ただ、願うだけだ。 安らかな眠りを。
「この部屋は書庫だったらしいな」 お化けキャンドルに照らされる部屋には、本棚がいくつも倒れていた。 床にはボロボロの本が散乱している。
「じゃあ、次の部屋に……梅流?」
ふと見ると、梅流が部屋の一点を見つめていた。
「…………」「…………」
青白い光の中、ゆらりと揺れたのは、美しい女性だった。
向こう側が透けて見える身体。 そして、浮いた足……そこから導き出される答えは、一つだった。
「幽霊…かな?」 梅流の問いかけに、幽霊は白目と同じ色の瞳を大きく見開いた。
『……貴方たち……怖くないの?』 当然といえば、当然すぎる疑問だった。
「怖くないよ? だって、貴女からは悪い感じが全然しないもん」 梅流があっけらかんと言い、蔵馬が淡々と答える。
『そう…なの……ありがとう。怖がられても仕方ないけど、やっぱり嫌だから』 幽霊は幽霊らしからぬ、砕けた雰囲気で苦笑した。
「あ、そうだ。ねえ、一つ聞いてもいい?」 手で大きさを作ってみせる梅流に、幽霊は首をかしげた。 『さあ……此処へは入ってこなかったけれど』 ふと幽霊が言う。
『私は此処から動かないでいるけれど、主人は徘徊しているの。主人に聞いてみて』 蔵馬が問いかけ、幽霊が頷く。
『……この城で亡くなった人は、皆まだ現世に留まって居るんです。城を攻め落とした魔物によって……いつまでも解放されずに』 思わず口を手で押さえる梅流。 許せなかった。
「どうすればいいの? どうすれば、皆を助けられるの?」 必死な梅流に、蔵馬は黙ってその小さな背を見つめた。 止めてはいけない。
『私には……これ以上…しゅ…じ……ん……に……』 すうっと幽霊が消えた。 「消えた……」 見上げる梅流に、蔵馬は言った。
「手がかりはあるよ。彼女はおそらく衣装からして、王妃だろうから」 「おそらくね。彼も衣装で分かるはずだ。それに王となれば一族の要。魔物といえど、簡単には消せないだろう」 探しに行こう。
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