6.いっしょにたたかう
「私も、戦う」
言った。 真っ直ぐと瞳を見つめて。 その言の葉に、蔵馬の瞳が静かに見開かれた。
「……梅流。今なんて……」 大きな緑色の瞳が、ゆっくりと細められてゆく。
「…………」 梅流は視線を逸らさずに、彼を見上げる。 無駄かもしれない。 蔵馬はきっと強い。
けれど、でも。 彼一人に戦いを任せ、見ているだけなんて、嫌だった。
危険なことだからということもある。 だが、それはほんの少しの心配だ。
だから、本当に不安なのは……モンスターを倒した後のこと。 モンスターのことは、よく知らない梅流。 敵だから、危険だから、闘わなければこちらが危ないからと思っていても。
それと戦い、傷つけ……場合によっては、命を奪う。
蔵馬がそのことをどう思って、今まで戦ってきたのかは分からない。 辛いのか、苦しいのか、痛いのか……あるいはもっと別の感情なのか。 サンタローズまで乗せてくれた商人たちは、恐怖心が先立っていて、それらは何もなかったようだった。
蔵馬は違う。 決して逃げようとは思っていないから。
ただ、それがどんな想いであっても。 彼一人に背負わせたくはなかった。
「……何が出来る?」 剣術使いにしては、手が綺麗すぎるから、と蔵馬は褒め言葉なのかそうでないのか分からないような発言をした。 「あ、うん……剣は使ったこと、ないよ」 梅流の頭から足先まで、視線を一往復させた後、蔵馬は少し考え、言った。
「ということは、魔法使い?」 「!」
ここまできて、ようやく分かった。 それはつまり。
「い、いいの!? 一緒に戦っていいの!?」 握りしめた手に込める力が、自然強くなる。 「一緒に戦ってくれるんだろう?」
嬉しかった。 戦えることがではない。 けれど、今、それはただの『逃げ』だ。
だから今は。
……その後の2人の動きは速かった。
「マヌーサ!!」 梅流の幻覚魔法により、こちらへ突進しようとしていたスライムたちは、完全に出鼻をくじかれた形になった。
「はあっ!」 蔵馬の振り下ろした刀が、スライムの1匹を霧散させる。
「逃げられたな」 刀を鞘に収めながら、蔵馬は父を振り返った。 「いや。久方ぶりにしては上出来だ。もっと精進しなさい」 はきはきと答えてから、蔵馬は梅流へと視線を移す。
「ありがとう、梅流」 そこには一緒に戦えただけではない、ある思いがこめられていた……。
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