その4 <オアシス>
翌朝、一行は再び出発した。
飛影の熱も下がり、蔵馬の機嫌は…まだ治っていないのだが、もう次の町へ進むことにしたのだ(←結局、鉄の斧のことは言い出せなかった)。
が……。
「あ、あ、あづい……」
「……これで今日に入ってから2852回目…」
「数えてんじゃねえよ、蔵馬……あぢ〜、もう我慢できねー!!何とかしてくれ〜!せめて熱くないところに〜!」
「2853回。でも、そんなこと言われても、我慢しろとしか言えないよ」
「ぞんな〜…」
不快指数100%といったところだろうか……サウナよりも熱い。
我慢出来ない幽助の気持ちも分からないでもないが……。
しかし、今更引き返すのだって、結局は熱いところを通るしかないのだから、同じである。
どちらにせよ、熱沙羅ー夢だって、昼間は熱射が吹き付けて、無茶苦茶熱いのだし。
外と違うのは、せいぜい影があるかないかくらいなのだから……。
「それに、行く当てもなく、さまよってるわけじゃない。鷹の目で向こうに何か見えたから、そっちへ向かってるわけで」
「熱沙羅ー夢の奴が言ってた、砂漠ん中の国ってやつか〜?」
「多分……でもかなり離れてるようだな。話を聞いた限りではそんなに遠くではなさそうだったのに……」
「距離感狂ってたんじゃねえの、あいつ……」
滝のように流れ落ちる汗を拭きながら言う幽助。
確かにそうだったかもなと、頬をかきながら思う蔵馬。
あの火炎術師が方向音痴だとは聞いていなかったが……(親しくなる前に、影だけになったともいえるが)。
しかし、距離が分かっていたならば……こんな時間には出発しなかったのに。
モンスターのオンパレード覚悟でも、夜に移動を……いや、一晩でこの砂漠は超えられそうにもないから、結局は同じかも知れないが。
まあいちおう一番熱く、太陽の高い時間帯は、例の双六場で潰していたのだが…(モンスターを倒したら、双六券がもらえたのだった)。
クリアは出来なかったが、桑原の新しい武器はゲット出来た。
しかし……何故、こんなものが武器になるのか分からないが……その武器とは、なんとハリセン。
いちおう鋼製ではあるものの、どうも緊張感に欠ける。
まあ、元々緊張感があったのかといえば、なかったような気もするが……。
……それにしても、熱い。
くどいようだが、熱い。
しつこいようだが、熱い。
とにかく、熱い。
昨日も暑かったが、今は更に熱い……。
それもそのはず、現在彼らが歩いているところは……雑草も生えぬ、黄褐色の砂が延々と続くだけの、本当の意味での「砂漠」なのだ。
昨日通ったところは、幾分まだ草も生えており、それが新鮮な酸素を放出していたため、まだマシだったのだ……。
それが今は、遠くから熱い風にのって運ばれてくる、熱い空気に混じった酸素だけ……喉の奥から、肺からどんどん熱くなってくる。
昨日は「熱い」と言うなと言っていた桑原も、幽助と一緒になって、熱さを訴えている有様。
蔵馬も戦う時には瞬時に付けられるようにしておいて、防具一式外していた。
飛影は再び日射病にならないようにと、1人だけブーメランで影を作って歩いているのだが…それでもやはり熱そうである。
「あぢー、あぢー。蔵馬〜。今、気温何度だ〜?」
「ちょっと待って…」
何処にあったのか、温度計を取り出して見る蔵馬(何処にあったんだ、本当に…)。
「えっと……73.5度」
「げ!体温より高いじゃねえか!!」
「世界最高記録よりも余裕高いよ……ついでに湿度は…ああ、100%か。そうだと思ったけど」
「マジかよ〜」
過去に、四次元屋敷にて体験した室温湿度&とある駄小説にて体験した気温湿度を、軽〜〜く越えている。
余談だが、世界最高気温はイラクの58.8度である。
ついでに最低はロシアの−89.2度…。
「余計な余談入れるなよ、作者!ただでさえ、話がゴチャゴチャしてるってのに!」
「…余計な談だから、余談って言うんだけどね。余計じゃなかったら、余談とは言わない……」
「うるせー!!第一まだつかねえのかよ!その砂漠のどまんなかにある常識はずれの国ってのは!!」
「まだだってば…」
「だーっ!!もう頭キた!!コエンマのやろ〜!!俺たちをこんな目に遭わせやがってー!!」
「絶対に帰ったら、シメてやるー!!」
「いい加減にしろ……俺がキレる前に……」
ゾクッ…
あまりの五月蠅さに、ついに蔵馬の堪忍袋の尾に切れ目が走った。
一気に気温が絶対零度まで低下……周囲に冷たい空気が流れる。
ある意味、涼しくなったかも知れないが。
しかしこれならば、まだ熱い方がマシかもしれない……。
いつ殺されてもおかしくないようなこの状況。
流石の幽助たちもこれには押し黙るしか……いや、最近ずっとこうだと言ってしまえば、終わりなのだが。
だが、何も蔵馬は熱さや彼らの五月蠅さだけで、苛立っているだけではない。
つまり、熱さも五月蠅さも、苛立ちの原因の1つではあるにはあるのだが……。
しかし、おそらく一番のイライラの原因は……未だに昨日のことを引きずっているのだろう。
幽助が意味も分からず、瑠架に連れられて行ってきた、例のあれである。
ちなみに作者は読者さまより教えて頂き、あれの意味をようやく理解した。
最も、パソコンの前で脇目もふらず、絶叫したのは言うまでもない……。
「……何だよ。分かったんだったら、書けばいいのにさ」
「俺たちに分からずじまいでいさせる気かよ、余計なことは書くくせに」
「(……言わないでおいた方がいいか……)」
深く深〜くため息をつく蔵馬。
むろん、幽助たちはこれ以上彼の機嫌を損ねないよう、ボソボソと小声で言い合ったのだが、彼に聞こえないはずがない。
それでも無言のままの蔵馬。
多分、彼らだったら失神はしないかもしれないと思っていたが……とりあえず、黙っておくことにした。
そして、歩き疲れること2日……(つまり結局、太陽が一番高い時間帯も、一番熱い時間帯も、この砂漠で体験したのである)。
一行の視線の先に、緑色の影が見えてきた。
「あれ、なんだ〜?」
「蜃気楼って奴だろ…ほっとけよ…」
「……いや、違うな」
「?。何で、分かるんだ〜?」
頭の中が「???」でいっぱいになっている幽助たち(いや、熱さでパンク寸前の脳みその僅かな隙間を埋め尽くしたといった方が正しいか……)
半分意識が朦朧としている今の状態では、蜃気楼じゃなくても、幻覚くらい余裕で見えるだろう。
なのに、蔵馬は「違う」と言い切ったのだ。
「鷹の目が反応している。間違いない。あのオアシスが女王の支配する国だろう」
「オ、アシス?オアシスってなんだ??」
「簡単に言えば、砂漠の中でそこだけ水があって、樹木が生えて……多分、それなりに涼しさもあるだろうな」
「何!!?水!?」
「涼しいだと!?」
いきなり顔に生気が戻った幽助&桑原。
予想はしていたのだろう、蔵馬は呆れた表情で頷いた。
しかし、彼の面が上げられるのを待たず、2人は走り出していた……。
「いくぜえぇー!!!」
という、未だかつてないほどの、活気とやる気の絶叫を残して……。
例え、一分前まで大苦戦していた砂漠一の強モンスターが現れようと、2人だけで蹴散らし、例えレベルが上がり新たな呪文を覚えようとも、全く気づかず……。
後に残された蔵馬と飛影は、呆れるしかなかった。
このパターンが果たして、何回あっただろうか……。
まあ戦いに参加せずに通れたという点では楽だったかも知れないが。
「……単純というか何というか」
「フン、くだらん」
〜作者の戯れ言 警告編〜
え〜、「ぱふぱふ」ですが……個人的な意見としては、今知らない方、永遠に知らない方がいいと思います。
どうしても知りたくても、ネットでは調べない方が無難だと……。
「ドラ○ンボール」に出てくるそうなので、知りたい方はそちらの方で。
変な話書いてすいませんでした!!
|