その3 <意味不明>

 

「それにしても賑やかな町だな〜」
「ああ。夜だってのに、店開いてるみてーだし、見せ物みたいなもやってるし」

夜でも明るい熱沙羅ー夢(アッサラーム)の町。
奇妙なバックオンはコエンマの趣味だろうか……。
とにかく五月蠅く、怪しげで、幽助たちの趣味には合わなかった。

彼らの言う見せ物というのは、ベリーダンスのことだろう。
何処かで見たことのあるような踊り子たちが、客の前で楽しげに、あるいはしんどそうに踊りを振る舞っている。
が、彼らは彼女たちの色気たっぷりの踊りも興味はなかった。
これが、螢子や雪菜がやっていれば、別なのだろうが……(見惚れる前にやめさせるだろうが…)

 

「蔵馬に言うか?店開いてるみたいだって」
「いいんじゃねえの?夜に開いてるんだったら、昼も開いてるだろうしさ。まあとりあえず見るだけ見てみるか」

と、いちおう暖簾(?)が下りていたので、開いてるらしい店に入ってみる幽助たち。
中は薄暗かったが、主人起きてカウンターにおり、ちゃんと開店しているらしい。
見れば、見たこともない武器や防具がかなりあるようだ。
と、2人の視線が、1つの初めて見る武器に止った。

「へえ。これ鉄の斧っていうのか。攻撃力かなりあがるみてーだし、たたき落とすだけなら、使いやすそうだな」
「けど、値段がな〜。蔵馬に相談もせずにやったら……」

まあ大体結果は見えているだろう……。
しかし幽助たちが今装備しているのは、鋼の剣と鉄の槍……彼らの普段を見ていれば一目瞭然なのだが、実はかなり使いづらいのだ。

元々、幽助は肉弾戦が中心だし、桑原は霊剣による剣撃くらいしかやったことがない=ただの剣も槍も使ったことなど皆目ない。
いちおう蔵馬の指導の元、慣れてはきたが……それでも相手の弱点をついて、スパンッとやるのは、向いていないのだ。
ただ振り下ろすだけのものの方が、幾分マシ、ということなのだ。

 

 

何があるか一通りに見た彼らは、一度宿に戻ることにした。
飛影もそろそろよくなっている頃だろうし、蔵馬が診ていなくてよさそうならば、鉄の斧を見てもらいたいし。
……と、彼らが宿に着こうとした、その時。

「そこのあなた…」

ふいに後ろから声をかけられたのだ。
振り返ってみると、そこには……

「…誰だ?」
「さあ、見たことある気もするけど……」

ほぼ同時に首をかしげる幽助&桑原。
しかし、おそらく「幽☆遊☆白書」ファンならば、8割方は知っているだろうと思われる彼女は、かの暗黒武術会にて、vs魔性使いTの折り、飛影と幻海師範を結界内に封じ込めた、自称・防呪壁能力は魔界屈指の結界師・瑠架であった(実際のところ、事実とは到底思えないのだが……)。

 

「私と一緒にぱふぱふしませんこと?」
「ぱふぱふ??……って、何だ、おい」
「さあ…おめー知らねえのか?」
「知らねえよ」

瑠架に聞こえないようにするつもりはなかったが、何となく耳元でボソボソと囁き合う2人。
『ぱふぱふ』とは一体……この世界の特殊な言語だろうか?
蔵馬がいれば、すぐに分かるだろうが……。

「ねえ」
「え、ああ……タダか?」
「もちろん」
「なら…行ってみるか?」
「そうだな」

魔物の誘いなどではなさそうだし、タダだというならば、行ってみてもいいかもしれない。
どうせ、まだ夜は明けそうにないし、時間もある。
『ぱふぱふ』の意味を聞こうとも思ったが、もしかしてここでは当たり前の言葉だったら、呆れられるかも知れない。
結構それは屈辱的だし……。

「じゃあ、着いてきてください」

そう言うと、瑠架は幽助たちを引き連れ、近くの民家までやってきた。
どうやら彼女の家らしい。
瑠架が玄関に入ったので、後に続こうとしたが、

「あ、ダメよ。1人だけね」
「……どうする?」
「じゃあジャンケンでもして…」
「ほらほら、早く」

と、彼女が問答無用で迷いもなく、引っ張ったのは……言わずとも幽助だった。

「お、おい!」

ポツンッと1人残された桑原。
当初は全く意味が分からなかったが……ようやく、顔で選んだと分かったとき、既にそのドアは固く閉ざされていた……。

「あのやろー!!!」

 

 

 

「おう、帰ったぜ」
「お帰り。遅かったね、何処行ってたんだい?」

宿で待っていた蔵馬の元へ、ようやく2人が戻ってきたのは、かなり時間が経過してからだった。
しかし、当然ながら蔵馬は心配した様子もみせず、少し眠たげな顔を向けただけだった。
ベッドでは飛影がまだ眠り続けている、しかし熱はひいたようである。

「ああ。その辺をウロウロとな。けどよ、本当にこの町って変わってるぜ。何か豪華なダンスなんかやってるし、夜なのに店開いてるしさ」
「店が開いてた…?」

普通だった蔵馬の顔が、僅かにゆがみ、そしてまたしても怒られた。
まあ夜だということもあって、怒鳴られるようなことはなかったが……。

 

「何で、俺をすぐに呼ばなかったんですか……そういうところには珍しいのとかが多いのに…それに夜開いてるってことは、昼間は開いていないことが多いんですよ……」

冷ややかな目つきな分、別の意味で怖い……。
少々後ずさりしながら、弁解する幽助たち。

「……わ、わりー…でもまだ開いてると思うし……言おうと思ったら、帰りに変な女に誘われてよ」
「変な女?」
「ああ。髪が赤紫で、紐巻いたみたいな服着てた…」
「(ああ、あの結界師か……)」
「それで、そいつに『ぱふぱふ』やらないかって誘われて」
「え゛っ……」

冷ややかな目つきが一変、今度は思いっきり蔵馬が後ずさり……怖いとかではなく、呆れと驚きと軽蔑が込められた異様な雰囲気だった。

「どうした?蔵馬」
「いや……別に……」

元の位置まで戻ってきた蔵馬だったが、そこには座ろうとせず、思いっきり馬鹿にしたような眼差し(実際しているのだろう)で、見据えて立っていた。

「それでよ〜。案内されてった先さ、そいつの家だったみたいでよ。ベッドで寝とけって言われて寝たら、部屋真っ暗にされてよ〜」
「あ、そ……」
「んで、『ぱふぱふ』っていうのされたけど、あれって肩もみのことだったんだ〜。いや、ごつい親父だったけど、意外と上手でよ。飛影のブーメランずっと担いでたから、肩こってて丁度よかったぜ〜」

 

 

「……」
「蔵馬?どうかしたのか?」
「いや……もういい。俺、寝ます」

というと、疲れ切った表情で、飛影の横のベッドに入ってしまった。
いつもならある程度の装備も外すのに、全て付けたまま……多分、外す気力もないのだろう。
しかし、幽助たちに完全に背を向けることは忘れていなかった。

「お、おい、何でいきなり寝るんだよ?」
「夜だから」

思いっきり当たり前のツッコミを入れる蔵馬。
というよりは、もうどうでもいいといった感じである。

「…そりゃそうかもしれねえけど、何でいきなり……って、おい。もう寝たのか??」

近づいてみると、蔵馬は眉間にしわを寄せたまま、まぶたをおろしていた。
ピクピクと痙攣しているところを見ると、まだ起きているようである。
狸寝入りならぬ、狐寝入りというやつだろうか……(そんなものない!)
しかし、今起こせばどうなるかは、大体見当がつく。
そっと彼から離れると、幽助は桑原を振り返った。

 

「なあ、桑原」
「あん?」
「俺、何か悪いこと言ったか?こいつ怒らせるようなこと…」
「いやー、言ってねえと思うぜ?」

「だよな〜。けど、どう見ても怒ってるよな?」
「……怒ってるっていうか、呆れてるみてーだけどよ。何考えてんだ?蔵馬のやつ。『ぱふぱふ』に、嫌な思い出でもあるのか?」
「けど、単なる肩もみだったぜ?あ、もしかして蔵馬のやつ、肩もみされるの、ダメなのか?」
「まあ若い奴なら、結構いるらしいけどな〜」

あーだこーだと、人が寝ている側で、勝手に推測しているのを、蔵馬が聞き逃すはずがない。
しかし、今起きて反論するほどの価値があるとは思えず、結局朝まで無視し続けることにしたのだった……。

 

 

〜作者の戯れ言 中間編 その4〜

え〜っと、この部ですが……実はこれ、作者の疑問だったりもします。
「ぱふぱふ」って何でしょうか??辞書引いても載ってなくて……。
ゲームやってて、終わった後に初めて会うキャラが男性だった場合は、あんまり悪い感じではなかったんですが、女性だと何か軽蔑されたみたいな感じで……。
意味も分からず、とりあえずそんな風に書いてみました〜。
誰か、ちゃんとした意味知ってる方いますか??
ちなみに作者は肩もみダメです(笑)