<お料理しましょv> 5  (璃尾)

 

「じぃさんや…この木は、なんと言う木でしょうな?」
「さぁな〜…きっとすごくありがたい木じゃろう」
「そうですね…それじゃ、お水をかけてあげましょう」
「しかし、ばぁさんや…川にも池にも、水がないぞ?」
「はあ…このところ、全く雨が降ってないからのう…」
「ありがたい木じゃ、水をあげたいのは山々じゃが、水がないのではな〜」
「そうですね〜」

「……ん?…はっ!!ここは何処だ!!」

突如、目覚めた飛影。
まだ、シマネキ草は頭や両手足から出ているが、それでも立ち上がった。

と、その拍子に、根付いていたシマネキ草が、地面から勢いよく抜けた!
(注:シマネキ草が、地面に根付くために所要する時間は、0.56秒です。人や妖怪ではもう少しかかります)

どばああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!

偶然としか言いようがないのだが、根付いていたところに水脈があり……
抜けた瞬間に、水が……

「おお!水じゃ!水じゃ!」
「水ですよ!じぃさま!水ですよ!」

老夫婦。涙を流して喜ぶ。

「何なんだ、あのじじぃとばばぁは?」
「流石は神様が恵んでくださった木!」
「ありがたいことです!」

老夫婦、飛影に抱きついて泣く。

「な、何なんだ!!貴様ら!!」
「末永くここに留まって、村を守ってくださいね」
「何をふざけた事を!!殺されたいのか!?」

そうは言っても、シマネキ草が生えている飛影に、そんなこと出来るはずがない。
それにしても、酷く腹が減っている。

「おい、飯…ないか?」
「はいはい!かしこまりました!」

そそくさ、家の中へ入っていくばぁさま。

「はい!持ってまいりました!」
「おい……」

ばぁさまが持ってきたのは、さっき湧き上がった『水』………。

「水くらい、いくらでもあるだろう!」
「はい。しかし、木は水が命です。ささ、どうぞ」
「貴様ら……」

「その木は、普通の物が食べたいんじゃないの?下の方は人間みたいに見えるし」

家の奥から、声がした。
と、同時にこちらに向かう足音も聞こえてくる。

「(何だ……じじぃとばばぁだけじゃないのか……)」
「今、晩御飯作るから、上がってってよ……」

と、可愛い声で出てきたのは、14歳くらいの少年だった。
その少年を見た途端、飛影はかたまった……。

「く……らま……」

そう…… その少年。 蔵馬にそっくりだったのだ!
もちろん、蔵馬本人ではない。
普通の人間だろう。
ゆえに、髪も瞳も黒かった。
少し蔵馬よりも小柄だし、髪の毛も後ろで縛っている。
服装は今では珍しい、着物姿。
それも上等なものではなく、貧乏人という印象を与えるボロいものを着ていた。

しかし…… 他人とは思えぬその顔。
飛影に歩み寄り、クスッと微笑んだ顔など、そっくりだ。

「どうぞ」
「あ、どうも……」

混乱と動揺もあったが、それ以上にその少年が蔵馬に似ているということがあったからだろう。
飛影は大人しく従った。

一方、こちら蔵馬。

「飛影――――――――――――!!!
 何処――――――――――!!!
 飛影――――――――――――!!!!」

木から木へ飛び回って飛影を探す蔵馬。
あたりは夕闇に包まれようとしている……。

「飛影〜〜〜〜。何処だよ〜〜〜。飛影〜〜〜〜」

疲れて座り込む蔵馬。

「なんか……眠い……」

そのまま、でかいきのこをまくらに寝てしまった……。