<食い倒れ> 7 (璃尾)
「……何なんだ、このメニューは…」
「だから……メニューだろ?」 「そんなの見りゃ分かる!!この内容は何なんだと聞いているんだ!!」
「おっとー!桑原選手、いきなり浦飯選手につかみかかったー!浦飯選手押し倒されて、床に転げ落ちましたーー!」
「浦飯選手ダウン!カウントを取ります!!ワン!ツー!」
「って、違うだろーーーー!!!」
「おお!浦飯選手、カウントツーで立ち上がりました!流石、魔族の子孫!!」
「あのな〜(怒)。ここは食い物屋じゃねーのか!?」
「ええ、もちろんそうですよ」
案外、瑠架が一番、普通かもしれない……格好は紐だけなので、かなり派手だが。
「じゃあ、何なんだ、このメニューは!?」
メニューの内容……。
飛影の頼んだ「魚の尻尾」。
もしかしたら、これが一番まともだったかも……。
魚料理は、何とそれだけで、その下には肉料理が書いてあるのだが……。
そこにも一つだけ……「狐の毛皮」としか書かれていない。
毛皮は肉ではないのだが……(そういう問題でもない!)
そして、前菜や一品料理には、包帯やガーゼetc……これを喰えというのか??
とどめの飲み物など、消毒液……。
「こんなもん、喰えるか!!」
「おれは飛影と同じでいいですよ。同種の毛皮は食べたくないです」
さらっと言ってのける蔵馬。
どうも主点に置かねばならないことを間違えているような……(さっきからずっとだが)
「く〜ら〜ま〜。そういう問題かよ〜」
「幽助と桑原くんはどうするんです?」
真顔で聞いてくる蔵馬。
酒を飲みまくった後ではあるが、そろそろ腹の空いてきた幽助たち(←はやっ!!)
「……何か喰わねーともたねーな……じゃあ、おれも魚の…」
「ああ。それもう二品しか残ってないんですよ〜」
「え゛っ!!?ない!!?」
冗談じゃない。
他に食べれそうなものなどないのに……。
しかし、食べないわけにもいかない。
「じ、じゃあ……狐の…」
「幽助……まさか、おれの仲間食べようなんて言いませんよね〜?」
「えっ、だって…消毒液なんて…」
「言いませんよね〜〜〜!?」
「じゃあ、おめーの魚……」
「言いませんよね〜〜〜〜!!!?」
「はい…言いません……包帯でいいです…」
「おっとー!浦飯選手、悪魔のような蔵馬選手の睨みに気迫負けしましたーー!!」
普通、誰も勝てんだろう……。
そして、10分後。
注文した料理が来たが……。
本当にそのまんまだった。
飛影と蔵馬の頼んだ「魚の尻尾」は、本当に魚の尻尾が運ばれてきた。
しかも、鯛やヒラメなんかのものではなく……ぬるぬるして細長いうなぎのような尻尾だった。
(何処かで見たことあるような…)
とはいえ、食べるのは蔵馬と飛影なのだが、二人ともあっさり通過してしまったが……。
「狐の毛皮」は誰も頼まなかったので分からないが、消毒液とガーゼは……、
言うまでもなく、しっかりガーゼと包帯が皿に乗ってやってきた。
両方とも未使用のものらしいが、大切なのは、そこではない。
これをどうやって食べるか、ということである。
むろん、普通の人なら無理だろうが……。
「どうするよ、浦飯」
「どうするったって……おめーはこれ喰えるってのか?」
「無理に決まってるだろ…」
頼んだには頼んだが、やはり喰うとなると無理がある……。
「おっとー!!浦飯、桑原、両選手!!はやくも敗北宣言かーー!!」
「別にいいよ…敗北でもハクボクでも…」
「えっと、ルールブックによりますと」
何処にそんなものがある料理屋があるのか……。
「頼んだものを食べなかった場合は、問答無用で食後のコーヒーを飲んで頂きます!」
「コーヒー?」
「そのくらい飲めるぜ」
「浦飯選手、桑原選手!!何とあのコーヒーを飲むことに同意しました!!」
「おおおーーーー!!!」
背後から喚声の悲鳴があがる。振り返って見ると……いつの間にか、ギャラリーが出来ていた…。
「何なんだよ…」
「『あのコーヒー』って何だよ…普通のコーヒ−じゃねーのか?」
ここまできて普通のコーヒーなはずがなかろう……。
「おまたせしました」
コトッと幽助たちの前に置かれたコーヒー。
見た目は普通のコーヒーである。
ブラックにしては、少し色が薄いような気もするが……。
「これの何処が変なんだ?」
そう言いながら、同時にコーヒーを口に運ぶ幽助と桑原。
……ここで、小兎の実況が入らなければ、命さえ危うかったろう……。
「おっとーーー!!浦飯、桑原、両選手!!硫酸入りコーヒーを口に運びましたーーー!!!」
「りゅ、硫酸!!?」
慌てて、顔からカップを遠ざける幽助。
しかし、その反動で中身が膝にこぼれてしまった。
「あ、あっちーーーー!!!!」
膝を抱えて、床を転げ回る幽助。
しかし、桑原はもっと悲惨だった……。
幽助より0.1秒ほど早くコーヒーを飲もうとしたがために……顔にコーヒーが……。
「あぢいいいいいいいい!!!」
「浦飯選手、桑原選手、ダウン!!カウントを数えます!!ワン!ツー!スリー!」
さっきから、誰かがひっくり返る度に、ちゃんとカウントしている樹里(暗黒武術会ではもっと不真面目だったぞ…)
しかし、当の幽助たちは、カウントどころではない。
銘々、膝や顔を押さえながら、店を飛び出した。
その様子を蔵馬と飛影は、他人事のようにゆっくりと眺めていた……。
ところで……結局、誰も頼まなかった狐の毛皮だが……。
実はこの料理。
名前が変わっていただけで、極普通のパンとスープのランチメニューだったということなのだが……。
この場合は、知らない方が幸せなのだろうか……。
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