<食い倒れ> 5 (璃尾)
〜四軒目〜
「はが…はが…」 ため息をつきながらも、いちおう心配している幽助。 某漫画の乾○治の作った「改良型スペシャルゴールデンパワーリミックス乾汁ネオ」の100倍のマズさと言えば、分かりやすいかもしれない…。
「幽助、次何処に入ります?」 当の蔵馬は、暢気に飛影と先を歩いていた。 「あそこにしよーぜ!あそこなら、歯がなくても大丈夫だしよ!!」 少々、躊躇している蔵馬。 何せその店の看板に書かれた文字は……『酎』 「誰の店か分かりやすいな……」 「よお!浦飯!!」 幽助たちが入らない間に、戸が開き、酎が出迎えた。 「飲みにきたんだ。いいだろ?」 一日くらい……いつもの間違いではないのだろうか……。 とりあえず、中へ入り、カウンターに座る四人。
「…本当に飲むつもりですか?」 「はあ。ほれ、はへひへひへーは?(なあ。これ、ためしてみねーか?)」 慌てる蔵馬をソッチノケで、幽助はあっさり注文。 はあ〜っとため息をつきながら、幽助を見据える蔵馬。 「幽助……飲み過ぎると身体に悪いですよ」 「おまちどお!!」 と、幽助たちの前に置かれた酒は……。
「は?猪口じゃねーか」 そう言いながら、四人とも通過。そりゃ、お猪口なら当たり前だろう……。 「酎。これが飲み倒れかよ?」 次に来たのは、小ジョッキ。 ビールがたっぷりと入っている。 「ジョッキか……なるほどどんどん、器がでかくなっていくわけか!」 ぐぐっとビールを一気飲みする幽助。蔵馬、桑原、飛影もあっさり飲んでしまった。 「次々いくぜーー!!!」 小ジョッキの次は、中ジョッキ、大ジョッキと続き、それから段々妖しくなっていった。
……そして、1時間後。いくら幽助たちでも、無事でいられるはずがない…。 「…幽助、飛影、桑原くん…大丈夫ですか?」 かなり対照的な幽助と桑原。しかし、双方ともに酔っぱらっているのは、よく分かる。そして、残りの一名は……。 「飛影?どうしたんです?」 とりあえず、近くにいては危険と判断した蔵馬。席を5つほど空け、別の椅子へ腰掛けた。 「はあ…三人とも完全に出来上がっちゃってますね」 彼は、何というものを発明してしまったのだろうか……。(まあ、自分が飲むためだろうけど) 「蔵馬。そういえば、おめーは何ともねーのか?」 「ええ。あんまり飲んだことはないんですけどね。まあ、妖狐の時にはこのくらいいつも飲んでましたけど」 このくらい……タライいっぱいの酒の何処がこのくらいなのか……。 「ここまできて、普通だったのはおめーが初めてだぜ、蔵馬…」
そして、更に1時間後……。 「ごちそうさま。それともまだあるの?」 そりゃ、参るだろう……。 「じゃあ、幽助たちが落ち着くまで、しばらく本でも読んでますよ」 と、カウンター横の本棚から、文庫本を取り出し、周囲の机をかき集めて、バリケードつ作り、一人で暢気に読み出した。 「そうだ。酎、店の修理代は本人たちから請求して下さいね」 ドガガガッ!! 突然、酎の目の前を通過したのは……全身酒がまわって真っ赤になった飛影だった。 当然のことだが、自分で飛んできたのではない。 「おらおら、飛影!!おれはまだやれるぞ〜!!」 ニッカと笑って、酎を見る幽助。尋常ではない。目が完全に宙を泳いでいる。 「待て…」 ガラガラと音を立てながら、壁から抜け出してくる飛影。しかもその反動で、壁が更に崩れてしまった。 「貴様の相手はおれだろうが……無視しようってのか!!!」 酎の言い分も全く聞かず、店の中で大乱闘が開始された。 「お、おい!蔵馬!あいつら何とかしろよ!」 「無くなる」ですめばいいのだが……この調子では、商店街まで破壊しかねない……。 「なあ。蔵馬〜。後生だから、頼むぜ〜」 さらっとトンでもないことを言う蔵馬。しかし、酎にとっては大事の前の小事である。 「な、何でもいいから、さっさとしてくれ〜!」 そう言いながら、3人に歩み寄っていく蔵馬。 案外、答えは簡単だった。 サアアアァッ…… 「くかーくかー」 「蔵馬…それなんだ?」 あっさり言う蔵馬。 こういうことが出来るなら、最初からやってもらいたいものだ……。
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