第十三部 宿屋の秘密〜個人情報のお取り扱いは慎重に〜

 

 

 

宿屋の主人:ツルベ は寝ています。

 

 

        チャララ ララララ〜♪ 1レベル上がった!
        力 を得た!
        知恵 を得た!
        信仰心 を失った!
        生命力 を得た!
        1HPを得た!

 

 

蔵:これで四人とも2レベル上げ達成ですね。
桑:レベルアップおめでとさん ツ・・・
死:その面をこれ以上デコボコにされたくないのなら黙ってろ!
桑:ヘイヘイ もう言いませんよ 鶴・・・
死:まだ言うか!

鈴:そうおこるなツルベ。
死:貴様・・・頭蓋骨カチ割るぞ

(訓練場の方へ向かって歩き出す)

幽:おーい 鶴瓶ー どこ行くんだー?
死:訓練場だ、この腹立たしい名前を変えに行く
駒:あー 怒ってる怒ってる

 

 

陣:にしても 2レベルは長かっただな〜
幽:ホントだぜ。 なぁ、やっさん・・・
飛:死ぬか?
幽:ははははは冗談だってば、ちょっと呼んでみただけだってぜ。そう目頭立てて怒るなよ。

駒:新しい名前のほうが定着しちゃっていたからね
  ねー、ぼんち・・・
幽:(ガシッ ミシミシ) 鈴駒〜 何を言いたかったのかな?
駒:イータタタタタ!(自分だって人のこと言えないじゃん)

 

 

蔵:あ、ぼんち・・・じゃない幽助。
幽:おうなんだ。
蔵:もう一回馬小屋に入ってくれ。どうやら次のレベルの経験値までもう達しているようだ。
幽:そんなに経験値溜まってたのか 今日は随分粘ってたからなー
  あ! オレまだ回復すんでないわ。

蔵:回復はレベル上がってからでもいいですよ。鶴瓶が戻ってきたら呪文掛けに行って貰って下さい。
駒:あれ?
鈴:どうやらまだ名前の変更が済んでいないようだな。
陣:あそこの手続き、ちーっとめんどいからな〜。
幽:名前変更の手続きの用紙が受付の机の裏に挟まってたし、ペンも下水管の中に放り込んであったから。
蔵:仕方ない、ちょっと訓練場の方に行って来きますから、オレが戻ってくるまでに休んでおいてください。
幽:りょーかい。

(蔵馬 訓練場の方へ向かう)

 

 

幽:あ〜あ〜 また馬の面みて寝るのかよ。
駒:だってレベル上がる方法ってココで寝るしかないじゃん。
桑:レベル上がるんだから素直に喜べ。
幽:へいへい。
鈴:オレ達は一旦酒場の方に戻っているぞ。
陣:先行ってるべ。
幽:おう。

 

(幽助を残し全員で酒場へ向かう)

 

 

 

幽:あー 泊まりたくねー
  ん? そういえば・・・

(馬小屋とは反対方向の宿屋の母屋の方を見ながら)

 

幽:こっちの方は全然とまったことねーよな・・・
  思えばこのゲーム始めてから今までまともな宿屋には泊まったことなかったな。
  蔵馬やばーさんはやたらと馬小屋ばっか使わせてたし。
  (ニヤ)そうだ!

 

 

(母屋の方に向かって歩きながら)

幽:(へへへ ちょっとぐらい贅沢したってバレやしねーよな。それに馬小屋ばっかじゃ宿屋のオヤジにも悪いしな!)

 

カランカラン ガチャン

幽:オヤジー 泊めてくれ。
宿屋の主人(以下主):いらっしゃいませ ユウスケさん。
幽:今日は金が余ってるしとまってやるぜ。
主人:ありがとうございます。こちらの料金表をご参考になさって部屋をお決めください。

幽:へ〜 こんだけ種類があったんだ
  げ、メニューに馬小屋がのってやがる・・・しかも“ただ”って書いてあるし。
  あ? この値段の横の 「/week」 って書いてあるのなんだ?
主:これは“一週間あたり”でという意味でございます。一週間当たりで横に書いてある料金になります。

 

幽:一週間単位でしか宿泊できねーの?
主:お客様はその間眠っていらっしゃいますので、時間がたったことに気がつかないでしょう。
  その間お部屋にお泊りでないお客様は、馬小屋と同じように原則時間は経過いたしません。
幽:へー じゃあいくら長引いてもバレねーっつーことか。んで この値段何が基準なんだよ。

主:もちろん部屋の質もございますが、ヒットポイントの回復量も部屋の値段に比例いたします。
幽:回復できんのか?!
主:はい もちろんでございます。

 

幽:なんだよ 先にに言ってくれりゃー最初っから部屋に泊まっていたのによ。
  うーん ロイヤルスイート、スイートルーム・・・今そこまで金がねーしなー。
  じゃあ この一番安い “簡易寝台” でいいや。
主:ありがとうございます、今係のものに案内をさせます。
幽:おう よろしく頼むぜ。

 

 

 

(こちら訓練場)

 

死:あんな分かりづらい場所に書類置きやがって陰湿極まりないぞ!
  ペン下水管に放り込まれていたのはまだしもインクが蛇口ひねって、出すとはどういうことだ!
蔵:そう怒らないで、元の名前に出来たんですからよしとしてください。

 

幻:おや、こんなところでなにやってんだい。
蔵:師範じゃないですか。ええ、ちょっと手続きに。

幻:そうか、鶴瓶は何の用事できたんだ?
死:(ズガッ――) たった今そのフザケタ名前を変えてきたところだ!
幻:なんだい、もう元のチビに戻ったのか。

死:誰がチビだ。貴様、人のことチビといえるような様か。
幻:自分よりチビなやつをチビといって何が悪い。
死:なにをー!貴様なんかゲームに入ってからさらに縮んでいるじゃないか!
幻:そのチビよりさらにチビなお前は何だ。
死:このーーーー!

 

蔵:(ボソ)死々若、静かにしてください、傍目から見たら、近所の子供たちが喧嘩しているようにしか見えませんよ。
  ところで師範、今までどこにいたんですか。
幻:宿屋の方だよ。回復が終わったんで馬小屋に泊まっていた。

蔵:幽助に会いませんでした?
幻:いや、見かけないね。
蔵:じゃあ 行き違いになったようですね。多分酒場の方へ向かったのかな。

 

幻:おかしいね、あたしは酒場の方から宿屋へ向かってきたんだが
蔵:ほんとうですか?それなら途中どこかで会うはずなんですけれど。
死:ケッ どうせまた先走って一人で迷宮に潜ったのだろう。
幻:それはないね、前回あれだけバカやったんだ。ちっとは反省してるだろ。

 

蔵:反省はしてはいないかもしれませんが、釘は刺しておいたので、先走ることはないと思います。
死:じゃあ 他にどこへ行くんだ。
蔵:商店街・・・はおそらく行かないだろう。
幻:寺院に行くなんて事はもっと考えられんな。
蔵:ということは・・・

 

 

 

 

(宿屋の一室に案内された幽助)

 

宿屋の従業員(以下従):こちらがお部屋になります。頭にご注意ください。
幽:うわ天井低っ!オマケに四段ベッドかよ。
従:現在こちらのお部屋に宿泊のお客様はいらっしゃいませんので、ご自由にお使いください。それでは失礼いたします。
幽:ま、馬小屋よりましか。久々に地面と馬草以外のところで眠れるぜ。

 

 

 

 

(訓練場から宿屋移動した蔵馬たち)

 

カランカラン バタン

 

主:いらっしゃいませ。
蔵:すまないが 宿帳を見せてくれないか。
主:かしこまりました。 少々お待ちください。

蔵:あれほど言っておいたのでまさかとは思いますが・・・
幻:いや、あのバカならやりかねん。
主:こちらでございます。
蔵:ありがとう。

 

(宿帳をめくる)

○月▼日 クワバラ様  宿泊    馬小屋
○月?日 コエンマ様  宿泊    馬小屋
○月■日 クラマ  様  宿泊    馬小屋

 





 

○月×日 ユウスケ様 宿泊 ――相部屋 簡易寝台

 

 

蔵:・・・・ありました。
幻:あんのバカが。しかもよりによって“簡易寝台”か。

 

キィーン カチカチ カチッ

 

幻:この音は・・・
蔵:はじまりましたね。

ガタン!

(突然宿屋の主人が立ち上がる)

 

 

 

 

(こちらは四段ベッドの一番上で気持ちよさそうに眠っている幽助)

 

幽:ZZZzzzzzzz・・・・

 

 

ギィィィィィィ……

 

(部屋の中に宿屋の主人が入ってくる)

 

主:ユウスケ は寝ています・・・

 

タンタタタカターン♪ お誕生日おめでとう!

 

幽:どあぁぁぁああああ!!(ゴンッ) いてぇー〜〜!!  (飛び上がった拍子に頭をぶつけました)

 

主:1レベルあがった!
  力を得た!
  知恵を失った!
  生命力を失った!
  運を失った!
  3HPを得た!

 

幽:な、なんだ???

 

バタン

(宿屋の主人退出)

 

幽:お、おい!「お誕生日おめでとう」ってなんなんだよ!
  つーかなんでオヤジがオレの誕生日知ってんだよ!!

 

ギィィ…

 

従:おはようございます。チェックアウトのお時間です。
幽:え?もう?
従:はい、まことに申し訳ありませんが部屋からご退出をお願いいたします。
幽:ヘイヘイ 分かりましたよ。

 

(幽助部屋から退出)

 

従:それではユウスケ様チェックアウトは完了です。
幽:金まだ払ってねーけどいつ払うんだ?
従:もうすでにお支払いは済んでおります。
幽:な、寝ているうちに勝手に金取りやがったのか!
従:ご利用ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております。

 

 

幽:おいちょっとまて! ゲ・・・
蔵:おはようございます幽助、よく眠れましたか(笑顔)

 

幽:蔵馬 ばーさんまで・・・何でココに!
幻:あれほど言っておいたのによくもやってくれたね。金全部つかっちまって

幽:え? あ”!財布が空に!
蔵:こっちの部屋の方に泊まるとHPが全快するか、金貨を全て使い果たすまでは部屋から出られないんですよ。
幽:なんだとぉー!? くそーあのオヤジ騙しやがったな!

 

幻:こんバカ者!人の話きかんで勝手にしくさって。おまけに一年年まで食っちまったじゃないか
幽:へ? ・・・(ステータス情報の石版確認)
  あ――!!マジだ一歳年食っちまってる! 

蔵:このゲーム馬小屋以外の宿泊施設をつかうと早く年を取るようにできているんだよ。
幻:あんまり年を食うとレベルが上がるたびに特性値が下がって、しまいにゃ老衰で死んじまうんだよ。
幽:ウソォ?!
幻:嘘ついてどうする。

 

蔵:今のところまだ十代だから年齢は関係ないですけどね。
  それより幽助、言いましたよね。これ以上勝手な行動をとったら――

幽:あ・・・一応オレだけが痛い目見ただけだから今回は・・・
幻:お前の辞書にゃ、自分勝手な行動で迷惑掛けることを「自分 だけ が痛い目を見る」っていうふうに書いてあるのかい?
幽:いや、だから
蔵:さーて どんな罰ゲームにしましょうかね。もう色々と考えてあるんですけど(微笑み)

幽:ま、まってくれーーー!!!

 

 

教訓:天井の低い部屋で四段ベッドの一番上に寝てはいけません。