第十一部 トラップ

 

 

息も詰まりそうな暗闇の中、とある一角だけが薄暗く光っている

薄い光のカーテンのような中で人影が六つ
そのうちの三つは全く動く気配もなく横たわっていた
あとの三つの影は動かない一つの影をぐるりと取り囲み座り込んで声を潜め話していた

 

そのなかの一人が動かず横たわっている影に手をかざし何事かを呟き始めた
かざした手がぼんやりと光だし徐々に光が大きくなってくる

突如 光が動かない一人に向かって吸い込まれた
一瞬 完全な静寂が訪れた

 

先ほどまで動かなかった人影が動き出した
辺りを見回し しばらく何事か考えているようだったが 納得したのかうなずいてみせ
自分を取り囲んでいる裾の長い黒衣を纏った一人に話しかけた

「――で 一体どうしてこんなことになったんですか?」

「それが、非常に言いづらいのだが……」

黒衣を纏った一人が話し始めた これまでの経緯を

 

 

 

 

― ことの起こりは数時間以上に溯る ―

 

いつもの様に迷宮に潜るメンバー
今日もまたレベル上げに勤しむため単調で機械的な作業のような戦闘が始まろうとしている

機械的な戦闘は彼らの趣味にそぐわないらしく
気分転換にメンバーのシャッフルを行ってみたものの
たいした気晴らしにはなっていそうもない

 

 

 

幽:あーあーあー(大欠伸)

陣:あーあ今日もまたはじまっただかー
蔵:不服そうですね 二人とも

凍:当然だろう 「戦えば必ず勝つ」戦闘なんかな
飛:部隊編成しなおしたところでやることは同じだ

死:部隊編成に関しては正解だと思う
蔵:そうですか?俺はショートコントが見れなくなって寂し…
死:寂しくない!

 

幽:楽しいパーティだったんだな
陣:戦闘よりそっちのほうが面白かっただ
飛:退屈しのぎにはもってこいのいい娯楽だった
死:俺は貴様らの娯楽提供の役者ではない!

凍:…大変だったんだな
蔵:お気遣い 痛み入ります

 

 

パーティは迷宮内を進みさらに地下へと降りていった

 

蔵:いつもどおりほぼ全員のレベルが上がるまで経験値をためます
幽:ほーい

飛:どうやら客人らしいぜ
幽:お さっそく
陣:
(バキッ!ボキッ!)勘がいいだな 飛影
蔵:盗賊という職業柄ですね

 

(暗闇からやつれた人影が姿を現す)

 

蔵:ゾンビ・・・・か 触れたら※麻痺を食らいます
  気をつけてください

 

  ※麻痺…RPGお馴染みの現象。
  このゲームでは「麻痺」の状態になると一切の行動が取れなくなる。
  早い話がそのまんま。

 

 

 

幽:死にぞこないの攻撃なんかくらわねえよ
死:黙れ さっさと片付けないか
幽:桑原が言っていたとおり よくしゃべるヌイグルミだなー
死:
(プチ)貴様も ん?

 

(気がつくと二体のゾンビに前後から挟み撃ちになっている二人)

 

幽:しまっ・・・!

(チビ・・・いや体の体積が小さかったため死々若丸は難を逃れたが
幽助は運悪くゾンビからのあつい抱擁・・・ではなく攻撃を食らってしまった)

 

陣:お―――――――い!
飛:
(前衛に出てくる)忠告したそばから食らいやがるとはな
蔵:ショートコントはまだ続きそうですね
凍:いい相方が見つかってよかったな
死:イラン世話だ

 

 

(結局その後 飛影も麻痺状態になってしまいやっと戦闘を終えることができた)

 

 

陣:あ〜しんどかった
蔵:死々若が飛影と漫才はじめるから…
死:オレのせいか!

 

凍:一度引き上げたほうがよさそうだな
蔵:そうですね 死々若丸、二人の麻痺を回復・・・
陣:しーーーっ なんか近づいてくんぞ

 

(すぐそばでうずくまりながらこちらをうかがう人影)

 

 

死:またか死に損ないの化け物!
凍:さっきより数が多い!

蔵:分が悪い!今は一先ず逃げましょう!
陣:蔵馬! うしろーーーー!

蔵:!?

 

ゾンビは くらまを ひっかいた!
そして 2のダメージをあたえた!
くらまは まひした!

 

凍:くっ!逃げるぞ!
陣:しかたねえだ!

 

( その後どうにか逃げ出すことのできた陣と死々若と凍矢 )

 

 

 

陣:はぁ〜 死体は重いべな〜
凍:陣、まだ死体じゃなぞ
死:このまま死体担ぐのも一苦労だ、先に呪文で回復させるか
陣:んだな
凍:だからまだ死んでない
死:腹が立つがまずこいつからにするか

 

(死々若丸が手をかざし幽助に向かって呪文を唱え始める)

ブゥゥゥゥン!!

 

(突然幽助が飛び起きる)

 

幽:コンチクショー コンニャロメ あにしやがんだって
  あれ? あの腐りかけモンスターは?
陣:寝ぼけてるだ
凍:ああ見事なまでのボケっぷりだな
死:さて、お次はこいつ

 

(死々若丸、飛影に手をかざし呪文をかける)

 

 

幽:なにー! もう戦闘終わってるだとー!
陣:んだ えらい大変だったぞ 死体運ぶの
凍:だから だれも死んでない

幽:で 蔵馬も麻痺っちまってるってわけか
凍:そうだ がすぐに回復させるだろう

死:よし 終わった次は蔵馬だな

 

幽:そうだ!ちょっとまってくれ
死:なんだ?
幽:ちっとだけ… もっと地下に潜ってみてちょーっと強めの敵を・・・

 

凍:ダメだ
幽:そこをなんとか
凍:ダメ
陣:いきてー! すんげぇ強ぇのゴロゴロしてんだろ!
凍:ダメだっ!

 

幽:五人中二人が 行きたいっつってるんだぜ
飛:三人だ、オレも行くぜ
死:雑魚ばかりで退屈だ 面子が気に食わんがオレも行く

陣:ど〜だ〜 41だぞ!
凍:(溜息)

 

 

陣:きまりだべ
幽:うっし 思う存分殴り合いやるぞ
飛:いっそ俺たちが一人残らず倒れるまで潜ってみるか
陣:いいな〜 それ
凍:やめろ 無駄死にするきか!

幽:どーせ コエンマが裏技使ってどうにか生き返らしてくれるって!

(そんな裏技ありません)

 

幽:とにかく行こうぜ
凍:・・・・・・

 

 

 

(麻痺状態になった蔵馬を担ぎながらパーティは適当に進み、とある扉の中に入った)

 

 

飛:幽助、下におりる道をしっているのか?
幽:しらね
陣:すすんでいきゃ そのうちどっかにでるだ
死:知らないでいけるわけがないだろ

幽:蔵馬が書いた地図があるから
  これみて適当に進んでりゃどこか出られるって
凍:(こいつらの能天気さは一体どこからやってくるものなんだ)

 

幽:まー あと23時間歩けばって 階段あった
陣:ビンゴ!
 

(いかにも愉快そうに階段を下りる4名とこれ以上進みたがっていない1名)
(彼らはこのさき、この迷宮の本当の恐ろしさを体験することになる)  

 

 

 

 

 

幽:ここが地下3階か
陣:おし あっちいってみるべ
凍:まて!なにがあるかわかった物ではないんだぞ!

陣:大丈夫だ!ただの廊下が続いているだけ…

 

グォォーン  ゴゴゴゴゴゴ  カチッ

 

陣:おおおお?!

 

グォォーン  カチ カチ   ガリガリガリガリ ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ ガタン

 

 

 

陣:さっきから 変な音出してんの誰だべ?
凍:…いや、どう頑張ってもあんな音は出せんと思うぞ

飛:ここの十字路で床が回転しているようだな
死:これが前に蔵馬が言っていたトラップ(罠)か?
幽:床が回るぐれぇ罠でもなんでもねえじゃんか
飛:道に迷わせるためのものだろう
幽:めずらしく冴えてるじゃねーか

 

凍:引き上げよう 戻れなくなったら元も子もない
陣:一回ぐらい戦ってからでいいべよ
幽:そうだぜ もう少し先に行ってみても

 

ガタン ボコッ!!!

 

うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!

 

 

凍:陣!幽助!

陣:だ、大丈夫だぁ〜
幽:くそ なんだ!落とし穴かよ!

 

死:どうやらこの階はトラップだらけらしいな
凍:だからこのままおとなしく帰って
幽:バッ… まだ一戦もしてねぇのにかえれるか! このまま進む!

 

 

 

(ここから先は音声のみでお楽しみください)

 

 

ガタン  ギィィーーー

うわぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!

ボコーン

 

ギリギリギリギリググググググ  ゴトン

ぎゃぁぁぁぁあああああああ!!!

 

いてー

どこだー

 

 

 

 

〈  2時間後  〉

 

 

凍:いい加減帰る気になったか?
陣:
(ゼイゼイ) まーだーだ!! ぜったい戦う!

 

(もうしばらく音声のみでお楽しみください)

 

 

ガガガ ボコッ

うぎゃ!

どけー

つぶれるー

 

ガッタン ボッカン

グラグラ

ギギギギギギーーー   キィィィィーーーー キューーーー

 

ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ   ―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

蔵:地下三階のトラップ地獄にはまってしまった訳ですね
凍:全くすまない、こちらがしっかりしていればよかったんだが・・・
蔵:いえ オレが麻痺で動けない間にどこかへいこうなんて考えた人たちが悪いんですよ
  
(誰かの顔を見ながらとぼけたように言う)

飛:フン

 

蔵:それからどうしたんです?
死:しばらくそのまま歩き続けたのだが・・・

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

凍:か・・・帰る気になったか・・・・?
幽:しかたねぇ・・・・(ゼイゼイ)
陣:ヤダーまだ一度も戦闘してねー
凍:ダダこねずに帰るぞ!

死:ところで 帰り道わかるのか?
幽:え?? なに??

凍:だから帰り道はわかるのかと
死:ずっと地図を見ていたのは貴様だろう
幽:え〜〜〜っと・・・・

死:まさか わからん言わさんぞ
幽:そんなことねぇぞ!帰り道がわからねぇんじゃなくって ここがどこだかわからねぇだけで・・・
飛:わからんのだな

幽:・・・・・・はい

 

 

死:責任は取ってくれるんだろうな
幽:おー いってくれるなヌイグルミ
死:(プチ)貴様!

陣:仲間割れしてる暇ねーべ!
飛:殴り合いなら勝手にやれ
  城に残っているやつらにケツぬぐいさせたいんならな
死:ぐ・・・

 

飛:それに帰りたいのならば、蔵馬の麻痺を治療すればいいだけのことだろう
幽:あ そうか!
陣:冴えてるだな〜
凍:(普通に考え付くことだろう)

 

 

陣:あ〜戦闘したかっただな
幽:この際仕方が…ん?
凍:何か見つかったか?

幽:こんなところに扉あったのか
飛:さっきからいくつも通り過ぎているぞ
幽:マジ?
陣:罠にはまりまくって気がつかなかっただ
飛:お前らの洞察力は牛並か?

 

幽:ちっと 入ってみっか
凍:帰るんじゃなかったのか!
陣:ちょっとだけだべ なぁ〜 いいだろ〜
凍:・・・ハァ いったらすぐ蔵馬を起こすぞ

幽:よーし、扉蹴破るぜ せーの

 

ドカッ!

 

陣:誰もいないべ
幽:つまんねぇな お?
死:階段があるな

幽:お〜!
陣:降りてみるべ!
凍:待たんか!!

(凍矢の静止を聞かずに ずかずかと階下に降りるメンバー)

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

蔵:さらに地下へおりたんですか?
凍:すまん 返す言葉もない
蔵:なるほど 通りで景色がこんななんですね
死:そこで凍矢があることに気づいて…

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

陣:さあ 今から探索するべ!
凍:
(ステータス画面を覗き込みながら) まった

陣:どうしただ凍矢?
凍:ヒットポイントが以上に低くなっている
幽:へ?

凍:どうやら落とし穴に引っかかると、ランダムで体力が減るようだ
幽:んだと?!

 

 

凍:幽助と陣は今一撃食らったらおそらく・・・
幽:ゲッ
陣:あれ? おかしくねーか?
  オレら死にそうなくらい体力減ってんのに何で他の三人は大丈夫なんだべ?

死:先にお前たち二人が罠に引っかかっているおかげで  とても安全に罠を避けられるからだ
幽:あーなるほど って オレら鉄砲玉か!

 

飛:今頃気づいたのか
死:探索は終わりにして さっさと引き上げたほうがよさそうか
幽:ちっ しかたねぇな
凍:死々若、二人に回復呪文をかけてやってくれ

死:この際仕方がないようだな む? どうしたチビ
飛:口の減らない人形だ――

 

向こうから何かが近づいている

 

陣:数が多いべな
幽:二階にいた「レベル1忍者」に似てるな
陣:倒せねぇことは無さそうだけど――凍矢、呪文の用意
凍:分かっている

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

蔵:おそらくLv3忍者だろう…突然囲まれたんですか
凍:ああ
死:舐めてかかったのがまずかった
飛:上の階にいた雑魚で似ていたからな

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

ドォォオオオオオオオ!

 

(敵の攻撃が届く前に凍矢が呪文を唱えほとんどの敵を壊滅させる)

 

陣:っしゃ 決まっただ!
幽:あとは残りをぶった斬るだけだ!

 

ヒュン グシャァァァァ!

 

幽:よーし 一人片付いた!後二人!
陣:こっちもすぐだべ!

 

シュ シャン! ガガガ

 

陣:(しまっ 浅い!)

ヒュオ

陣:(?!)

(黒装束の敵は素早く陣に一撃を食らわせた)

 

ドシャ!

幽:陣!

凍:死々若! すぐに陣を回・・・

 

ぐらぁああ

ドタン

 

凍:ふ・・・く・・・!?
幽:じ・・・・陣!
死:な・・・

 

(今までにない衝撃が走った)
(黒装束は真っ直ぐ陣の首を狙った)  
(そして首を跳ね飛ばした)

 

 

幽:陣!・・・やろぉ!
飛:蔵馬が言っていたクリティカル(一撃必殺)とかいうやつだ!
  生きて帰らなければそいつを生き返らせることもできないだろう
  この状態ならばまだ復活できる
  今は敵を倒すことだけに集中しろ!
幽:いわれるまでもねぇ!

 

ヒュン!

 

(幽助が陣を倒した黒装束に向かって振りかぶる)

シュン!

(攻撃は当たるものの致命傷にはならない)

 

 

(一方――)

 

飛:(挟み撃ちにするぞ いいなチビ)
死:(貴様がいうか)

(黒装束の一人を取り囲み飛影と死々若が攻撃を仕掛ける)

ドゴォ!ズバッ!

(攻撃がヒットし敵が崩れるように倒れる)

 

 

飛:あと一匹
死:一気に行くぞ
  (死々若が先に攻撃を仕掛ける)

 

ヒュオォ ガッ!   シャシャ!

(後ろへ避けたところを飛影がなぎ払うように短刀を振るう)
(短刀では大したダメージを与えられないためわざと大振りにふり逃げ道を残す)

 

飛&死:(今だ!)   (待ち構えていたように幽助が振りかぶった剣を振り下ろした)

 

(が 振り下ろす直前黒装束が幽助の懐に飛び込んだ)

 

 

幽:(ダメだ!攻撃がまにあわねぇ!)

 

(黒装束が刀を突き出す)

 

幽:くそ!!

 

(幽助の剣が敵の首筋に食い込んだのと敵の刀が幽助の腹を突き刺したのはほとんど同時だった)

 

幽:へっ… ただでくたばって たまるかよ…

 

 

飛&凍:幽助!

 

 

(両者がゆっくりと倒れる)

 

 

ドォォォ・・・・