プロローグ

 

 

 

 あの時。
 もう、自分は死ぬんだと。疑わなかった。

 

 

 

 ――あなたは?

  こえをかけられ気付くと、オレ自身は魂の存在で、ある光の傍に立っていた。

 

『お前こそ』

 

  たいして大きくはない丸い光は、訊かれるとわらった。

 

 ――さぁ? ぼくは、まだ生まれていないから。

(生まれていない?)

 

 意味の判らないその答えに、オレは眉間にシワを寄せる。
 そんなオレには気にせず、目線より下にいた光はふわふわと浮上する。

 

 

  ――ねぇ。あなたはだれかを、まっているの?

『待ってる?』

  ――うん。とても、だいじなたいせつな…だれかを。

 

 

  ふ、と。
 頭の隅を、ある白狐(しろぎつね)の姿が横切った。
 待ってる? そいつの事だろうか?

 

 

 

 

 ――いいよ。あげる。

『は?』

 ――ぼくのからだ、あげる。

 

 

 体?
 理解しきれなくて、思わず光を凝視する。
 光はオレと目線が合うと、輝きを増していった。

 

 ――あげる。

 

『何を…っ』

 何を、言ってるんだ。

 

  ――あなたが、そのひとと、あえるように。

 

 

  光はオレの答えを待つ事なく、一層輝きを強くした。

 目を開けていられない。
 それ程に、

 

 

 そいつは光を放出した―――…