〜また来年も〜

コンコンッ

「お兄ちゃん!入るよっ?」

カチャッ

?おはよう。どうかした?」
「おはよっ!ねぇ、今日何の日かわかる?」

ある日の朝。その少女は起きてすぐに兄、蔵馬の部屋へ行った。

「今日・・・?何かあったっけ?文化祭はまだだし・・・。」
「え〜っ!ひっど〜い!!それ本気で言ってるの!?」
「くすっ、冗談ですよ。」

少女が頬を膨らませると、蔵馬はにこっと笑って――

「今日は、の誕生日だよね。おめでとう。」

そう言って、可愛らしいピンク色のリボンでラッピングされた小さな箱を渡した。そう――今日は、の誕生日。

「わぁ〜っ!よかった!覚えててくれたんだっ!」
「当然。可愛い妹の誕生日、忘れるわけないですよ。」

蔵馬がそう言うと、は今貰った箱のリボンと同じ、ピンク色に頬を染めた。そしてにこっと笑って――

「ありがとう!ね、開けても良い?」
「もちろん。」

わくわくしながら、しかし丁寧に箱を開けていく妹を優しい目で見ている蔵馬。

「わぁ〜!すっごく綺麗・・・!」

箱の中身を見て歓声をあげる

「付けてみて?絶対似合うよ。」

蔵馬があげたのは、きらきら輝くブレスレットだった。七色の星がたくさん付いていて、とても神秘的で―――

「わっ・・・!」

蔵馬がそっとの腕にブレスレットを付けた。

「うん、やっぱり。すごく似合ってるよ。」
「・・ありがとう・・・大切にするねっ!」

はにっこり笑ってお礼を言った。蔵馬も微笑み返す。しかし、突然はふっと考え込んだ。

「お兄ちゃんの誕生日は3月だよね・・じゃあ・・・5ヶ月くらいあるのかぁ・・・。」
「くすっ。、その台詞去年も言ってたよね。」
「えっ!?そ、そうだっけ?」
「ええ、言ってましたよ。」

蔵馬が口に手をあてて笑った。するとはまた考え込む。

「あれっ・・?う〜ん・・・まぁいいや!ねぇ、お兄ちゃん何が欲しい?」
「えっ?」
「何でもいいのっ!今から準備するから!」
「・・まだ早いと思うけど?」
「い〜い〜のっ!ねぇ、何が欲しい?」
「・・そうだな・・・・・。」

蔵馬は少し考えてから、にこっと微笑んだ。そしての目の高さに合わせて、そっと頭を撫でる―――

「次の誕生日にも、の笑顔が見れたら何もいらないよ。」

「えっ・・・・・・・・。」

「くすっ。また来年も、最高の笑顔で傍にいて下さいね。」
「・・・も、もうっ!ちゃんと考えといてよねっ!あ〜遅刻するっ!」

は頬を赤く染め、パタパタと自分の部屋に戻って行った。その様子を優しく見送る蔵馬。

「・・本当に・・・いらないんだけどな、何も・・・。」

―――次の誕生日も、その次の誕生日も、そのまた次の誕生日も・・・・・・・

俺の傍で、ずっと笑顔でいてほしい。

それ以上の贈り物なんて、俺には考えられない。

来年も、再来年も、ずっとずっと・・・・・・・・・・

ずっと傍で、その笑顔を―――――

End