<12人の……>

 

 

 

幽助「……なあ、今がチャンスだろ……?」
静流「そ、そんなこと言っても……」

 彼女の言葉に、少年はこたえなかった。

幽助「金髪のオネーチャンがいいなんつったけどさ……俺、仕事中、ずっと我慢してたんだぜ……アンタらを口説くのをさ……」
温子「ちょ、ちょっと落ちついて、ね? こ、こんなのって……」

 怯えながらも聡そうとする彼女にも、少年はこたえなかった。

 

幽助「いいじゃねえか……ほら、嵐が気になって、誰もこねえし……」
温子「そんなっ」
静流「い、や……」

 麗しい瞳に浮かぶ涙に、少年はゆっくりと笑んだ。

 ……まさか、その様を、第三者に見られているなど、思ってもみず……。

 

 

 

蔵馬「…………」
雪菜「…………」

 柱にしがみついて、様子を伺うのは、十代後半の少年と、十代前半の少女。

 片方は紅い髪、片方は水色の髪。
 それでも、彼らの血縁を裏付けるように、その面差しは本当によく似ていた。

 その瞳にあるのは、好奇心とある種の強烈な欲求。
 決して、終わるな、ああでも進むなという、矛盾しながらも誰もが理解するであろう、強烈な悪への欲だった。

 しかし、それを心の何処かで理解していながらも、止めようとするのがまた、人間。

 

桑原「お前たち……趣味が悪いぞ」
蔵馬「五月蠅いな。今、いいところなんだから、黙ってて」

飛影「や、やめた方がいいよ、こんなの……と、とめないと」
雪菜「黙っててって言ってるでしょ。とめたりしたら、ぶっとばすわよ」
飛影「…………」

 警告が聞き入れられないことに、まだ幼さの残る黒髪の少年は、びくりと半歩下がる。
 その横では、長身で黒縁眼鏡の青年が、溜息を連発していた。

 

 

桑原「全く……豪勢な洋館貸し切りかと思ったら、次々妙なことが起きているというのに……お前たちには、常識というものがないのか? 消えた連中の捜索をほおりだしたかと思えば……」

蔵馬「五月蠅い、そんなこと後回しだ」
雪菜「そうよそうよ。大体、常識なんて、非常識あってこその常識≠ナしょ。そんなもんに拘ってたら、いつまでたっても、出世も結婚できないわよ。この石頭」

桑原「…………」
飛影「そ、それは言い過ぎなんじゃ……」

 

雪菜「あんたは黙ってて。大体、アンタたちだって、捜索ほったらかしてんじゃないの」
蔵馬「そうそう。失踪者が見つかってから、呼びにきたらどうなの?」

飛影「いや、あの、それは……」

 

 

蔵馬「それにしても、進みが遅い……ナンパのくせに、意外とヘタレだな」
雪菜「そうねぇ……そろそろ押し倒してもいい頃合いなのに」

蔵馬「ああ、煙草吸いたくなってきた。ライター……あ、貸したままだったか」
雪菜「大体、煙草なんか吸ったら、匂いと煙でバレるじゃないの」

蔵馬「それもそうか」
雪菜「今は、耐えるのみ、よ。お兄様」

蔵馬「了解」

 

 

飛影「あ、あのさっ」

蔵馬&雪菜「「何っ!? 五月蠅いって!!」」

飛影「ご、ごめん……あの、あの実は……いなくなってた人たちが……」

蔵馬「は?」
雪菜「どうかした?」

飛影「そ、それが……」

 

蔵馬「…………」
雪菜「…………」
飛影「…………」

 

 

 

蔵馬「……桑原くん、台詞」

桑原「…………」

蔵馬「駄目。フリーズしてる。カメラ止めて」

 

ぼたん「あいよ〜」

 

 

 カチ

 

 

 

幽助「だあっ!! またかよ!! おい、桑原!! お前、何度NG出せば、気が済むんだ!! しかも、全部同じシーンで!!」

温子「あ〜、腰が痛かった〜」
静流「ホントよね。ちょっと、和。和? ……駄目、まだ止まってるわ」

 

蔵馬「……無理ないけどね。雪菜さんから『結婚できない』『石頭』なんて言われたら」
雪菜「ええ? どうして、私に言われたら、かたまってしまうんですか?」

ぼたん「まあ、世の中には色々あるってことさね。2人とも御苦労さん、長台詞9回もやらせちゃってさ」

蔵馬「大したことはないよ。飛影の方が、ある意味大変じゃない?(桑原くんと同じ意味で)」
飛影「フン……下らん」

 

幻海「全く……何時になったら、次のシーンを撮影出来るのやら……あたしは照明係も飽きたんだがね」
螢子「本当。フィルム、あんまり余ってないんだけど。どうする? 蔵馬さん」

蔵馬「このシーンを飛ばして、次撮りたいところだけど……桑原くんが、コレに耐えられない以上、今後のシーンも多分無理だろうから、先に克服してもらわないと」

 

 

幽助「大体!! 某有名同人誌【ヨシ●んでポン!】に載ってるとか言う、幽白が実はドラマで、キャスティングされた役者がいる。そいつらがクランクアップで慰安旅行へ行った先で、惨劇が……≠チていうのを、俺らで逆パロしちまおうってシチュエーションからして、無理があるがな!! それ以上にな!! そもそもこの配役に無理があるだろ!! 雪菜ちゃんの役『天童美保……性格:雪菜と正反対。乱暴で勝ち気な不良少女。趣味はゲーセンだが、負けたらゲーム機ぶっこわす』!! こんなのに睨まれて、桑原が無事でいられるかよ!!」

 

蔵馬「うん、なまじ雪菜ちゃんの演技が上手いだけに、ね……」

雪菜「ええ? どうして、私の演技で和真さんが無事でいられないんですか?」
ぼたん「いや、そういうこともあるんだって!!」

 

温子「けど、あたしたちの役だって、結構大変なのよ? 静流ちゃんの『酒田砂夜……性格:静流と正反対。トイレはウォシュレットがついていないと落ち着かない』って、今時、中々いない役所だしさ」

静流「温子さんの方が大変じゃない? 『真室川歌子……性格:温子と正反対。壊滅的御嬢様育ちで、見た目の美貌に反して、頭の中はお花畑』……想像もつきにくいわ、私には」

温子「うん、実際私もあんまり分かってないと思う……一生、分からないタイプだと思うわ、コレ」

 

 

幽助「あのな〜! 分かる分からないでいやあ、俺だってさっぱりなんだよ!! なんだコレ! 『新庄陽平……性格:幽助と正反対。女とみれば、すっとんでいくナンパ野郎。にも関わらず、今のところ、デート経験すらない』、俺でもなくはねえんだぞ!! デートくらい!!」

ぼたん「あ〜、そうだろね。デート≠チて、そもそも親しい男女が出かける≠アとだもん。そこまで進んでなくても、螢子ちゃんと出かけたら、そうなるか」

幽助「…………(///)」

 

 ぱこん

 

ぼたん「いった〜い!! 殴ることないじゃないのさ〜!!」
螢子「そうよそうよ!!」
幽助「……お前らは楽だからいいよな」

螢子「は? まあ……『寒河江利華……性格:螢子とさして変わらない』だけど」
ぼたん「ええ〜? あたいは、そんなことないよ。『大石田なを……性格:ぼたんと正反対。未成年にして愛煙家ながら、不良にあらず。クールでドライな高校生』。全然あてはまらないじゃん! 自分で言うのもなんだけど!!」

幽助「ちげーよ! 出番が少ねえって意味だっ!!」

 

ぼたん「ああ、なるほど。あたい、かなり前の方で失踪するもんね。後は、死体役だけかな? そういう意味では、師範も楽ですか?」
幻海「……まあね。『鮎川節子……性格:幻海と正反対。よくいるあめちゃん≠くれるような、おだやか〜なおばあちゃん』……違いすぎるが、あたしが最初の失踪者だからね」

 

 

蔵馬「そういう意味では、飛影が一番大変だろうね、今後。最後まで生き残るのは、彼と真犯人だけだから。『楯岡守……性格:飛影と正反対。気弱な中学生。常にビクビクしているが、本心では皆と一緒にいたい』……演技ができるか心配だったけど、飛影、君結構上手いね」

幽助「おお! それは俺も思った! 桑原の『鶴岡信国……性格:桑原と正反対。黒縁眼鏡の似合う大学生。真面目が服を着ているどころか、生真面目が裸体で歩いてくるようなクソ真面目』がボロボロなのに比べたらよ!! いくら晩飯1ヶ月に釣られたとはいえ、迫真の演技じゃねえか!!」

飛影「……殺すぞ」

 

 

幽助「しっかしまあ……あれだな。一番すげーのは」
ぼたん「そだね、やっぱり……」

 

 

一名と桑原のぞいて全員「「「蔵馬(くん・さん)だな(だよな・ですね)」」」

 

蔵馬「……そうかな?」

 

 

螢子「うん! 間違いないわ! 『天童悟志。大学生。バンドを組み、路上で気の赴くまま歌っていたところ、スカウトされる』」
温子「『演技にかけては天才ながら、別段努力をしているわけでもなく、呼吸同然にできる。そのため、他の役者を見下しているところあり』。前半はともかく、後半はね」

静流「『歌も続けており、たまに出せば、必ずオリコン1位を獲得』。まあ、蔵馬くんの声と歌唱力なら、これは出来そうだけどね」
幻海「『ただし、紅白は絶対に出ない。理由:面倒だから』……ああ、これはありそうか」

 

幽助「『性格はかなり不良で、少年時代の補導歴も半端でない』……コレ、俺っぽいな」

ぼたん「『にもかかわらず、逮捕≠ヘ面倒なので、少年法に引っかかる年齢になってからは、一度も警察のお世話にならない、強かさの持ち主』……幽助、この辺あわないわよ。イテ」

 

幽助「こんだけ違ってて、けど違和感なく、上手いもんな〜。なあ、飛影?」

飛影「……『愛煙家で、ライターが必需品』……やつの武器にはならんな」
蔵馬「まあ、そうだね。けど、飛影。君、もっと言いたいこと、あるんじゃないの?」

飛影「…………」

 

 

雪菜「『天童美保とは、実の兄妹』……あの、蔵馬さん……」

蔵馬「ああ、雪菜さん。俺、弟はいるけど、妹はいないから。炎も使えないし。――飛影に聞いたけど、お兄さん、炎使いだったんでしょ?」

雪菜「……そうなんですか」

 

幽助「……確かに、脚本、あながち嘘ついてもねえんだよな」
ぼたん「本当。顔だけ見れば、飛影の妹っていうより、蔵馬の妹って言った方が、しっくり来るもんね〜。目が大きい所とか、ちょっとクセっ毛のところとか」

飛影「貴様等……」

ぼたん「え? あ? き、きこえた?(汗)」

幽助「ゆ、雪菜ちゃんには言ってねえだろ!!!」

 

雪菜「あの〜?? 私が何か???」

幽助&ぼたん「「何デモナイデスっ!!!(滝汗)」」

 

 

 

蔵馬「とにかく、最初からやり直しだ。まずは、移動させた小物を元に……あ」

幽助「どうした?」
蔵馬「……コエンマ」

ぼたん「あ」

蔵馬「『米沢辰也……性格:やっぱりコエンマと正反対』、忘れてた」

 

螢子「あ、確か……」
静流「この後、死体で登場するからって……」
温子「カーペットの下に……」

 

全員「「「…………」」」(←感情はそれぞれ)

 

 

 

幽助「わーーっ!!」

ぼたん「こ、コエンマさまーっ!!」

螢子「はやくカーペットあげないと!! 窒息しちゃう!!」

幻海「その前に圧死しておると思うがな」

静流「ばあちゃんに一票」

温子「っていうか、どの辺にいんの? 小さくって分かんないわよ」

 

蔵馬「とりあえず、桑原くん。おきておきて」

桑原「ゆ、きな……さん……俺、俺……けっこ……ん……」

 

飛影「フン、くだらん……」

 

 

 

 意味はなく、終わる。

 

 

 

 

 

 

 〜作者の戯れ言〜

 

 ……正直、私も「ヨシりんでポン!」って、詳しくは知らなくて……(何せ幽白にハマったのは、連載終了数年後……)

 とりあえず、「1.幽白は実はドラマ」「2.それぞれ役者が演じている」「3.蔵馬役と雪菜役は兄妹」「4.大人コエンマ役と妖狐蔵馬役は同一人物」「5.螢子役をのぞいて、キャラは全員正反対の性格」というのらしいです。

 5の正反対っていうのは、↑で表記したようなことの内、「静流役はウォシュレットトイレでないと無理」「ぼたん役と蔵馬役は煙草を吸っている」「桑原役は黒縁眼鏡」「幽助役はナンパ野郎」というのは、ホントに書いてあるっぽいです。
 あくまで、ネット調べまくって仕入れたネタですが。

 その他は今の性格からの想像……というか、妄想??
 サイトによって、書いてることがマチマチなので、皆さんされていることなんじゃないかな〜と(なので、あやかって?/笑)
 もしも、ちゃんとした設定があったのだとしたら、すいません!

 幽白がドラマっていうのは、パロディ的には、かなりいいネタなんじゃないかな〜と思います。
 「キノの旅」と「学園キノ」みたいに、両方ファンになる人って多いと思うし。