<真の姿> 4

 

 

 

「……そうだな。じゃあ、遠慮なく怖がることにするよ」

帰路についてから、しばらくして、海藤が言った。
ちなみに今は二人だが、少し前までは他の男子や女子と一緒だった。

 

遅刻していたと思われいた女子たちだったが、案の定男子たちを脅かそうと、先に校舎に入り込んでいたのだ。
そこへ偶然低級妖怪が現れ、女子たちは強制睡眠。
男子が携帯にかけた際、キツネ並に耳のいい南野は校舎の中からコール音が聞こえてきたので、中にいると察し、助けに行った。
結構その妖怪がタチの悪いヤツで、南野を怒らせてしまい、妖狐に戻った……と、こういうことだったのだ。
もちろん、妖怪は哀れにも霊界送りということに。

寝ていたため、女子たちは誰一人南野の本当の姿を目撃せずにすんだが、なかなか目を覚まさなかったため、他の男子に連絡をとり、とりあえず一人一人家に送った…今はその帰り道である。
南野と海藤の帰る方向は、途中までは同じのため、とりあえずは一緒に歩いていたのだが……。
海藤がこの一言を発するまでは、双方無言だった。

 

だから、南野は不思議そうに海藤を見つめた。
意外にも海藤は、恐怖も嫌悪も何もなく、ただいつもの顔で、言った。

「ただし妖怪の君をね」
「?」
「さっきの南野ははっきり言って怖かった。鳥肌立ったし、トイレにも行きたくなった。けど、だからって普段から怖がる気はない。今の南野は怖くないからな。妖怪の君だけ、素直に怖がることにするよ」

「……そう」

海藤の言葉に、南野はそれだけしか言わなかった。
あまり街灯のない路地の上、月が再び隠れたため、あまり顔はよく見えない。
いや、そうでなくても、無理に背けているのだから、無理だろう。

ただ……少しだけ、その頬が光っていたような気がしたのは、気のせいだったろうか?

 

 

「じゃあ…ここで」
「ああ、また明日」

とあるT字路で別れ、それぞれの家へ向かう。
ちらっと振り返ったが、もう南野の姿は見えなかった。

深くため息をつきながら、夜空を見上げる。
月はまた出ていた。

 

「月光か……ちょっと怖いな」

はあっと深くため息をついた。

 

目標にしていた男の意外な一面を見たことによる、恐怖とそして感動。
今度あの化け物に会った時は、きっと素直に恐怖してやろう。
いや、考えなくても、恐怖することは目に見えているが、それでも素直に怖がってやろう。

そして元に戻った時には、いつもと同じように接するだけでいい。
それで充分。
同一人物だろうが、どちらも南野だろうが、恐怖する時としない時があってもいいだろう。

 

それが人間というものだろうから……。

 

 

 

 

 

〜作者の戯れ言〜

キリ番をとられてから、何か半年近く経ってしまっていたような…(核爆)
遅くなって本当にすいませんー!!!

え〜、こんなのでよかったのかな……。
リクエストは、「もし海藤くんが蔵馬(妖狐)の姿を見たらどんな反応をするか」だったんですが。

こんな反応でよかったかな……。
よく考えてみれば、間近で妖狐蔵馬さん見たことのある人間って、いないんですよね。
螢子ちゃんたちも遠目で見ただけだし、御手洗くんはそれどころじゃなかったろうし。
だから、普通の人間の方が間近で見たら、きっと綺麗とか感じる前に怖いだろうなと。

しかし……あー、こんなのしか書けなくてすいませんー!!(しかも長いし…)