<目覚めた時> 2

 

 

 

中では蔵馬がベッドに横になったまま、こちらを見ていた。
外の会話が聞こえていたらしく、

「酷いな、飛影。棄権させるなんて」
「そういう言い分は、1人で起きあがれるようになってから、言え」
「さっき起きあがれたよ」
「……立てんかっただろうが!!」

苦し紛れに言う飛影を、蔵馬は微笑を浮かべながら見ていた。
考えていることは分かる。
試合に出したくなかったことくらい……だが、もう少しからかってみたかった。

「もっと戦いたかったけどな」
「戦えるか、そんな身体で」
「戦えないこともないさ。負けるかもしれないけど」
「負ける確率の方が圧倒的に高い。相手を殺すまで止まらんヤツだったら、どうするつもりだ」

ため息をつきながら、自分が寝ていたベッドに腰掛ける飛影。
ちらっと蔵馬の包帯を見ると、管の動きは先程よりも若干遅くなっていた。
少し傷が軽くなったのだろう。
だが、まだ動いている以上、油断は出来ない。
当分寝かせておかなければ……。

 

ふいに蔵馬が壁に目をやった。
そこにはカレンダーがかかっている。
今日の日付まで×印がつけられ、月末辺りに紅い印がついていた。

「予定通りなら、大会終わるまで2週間くらいか……ヒマになったな」

本当はヒマとも思っていないが、飛影をからかうつもりで呟く蔵馬。
飛影にしてみれば、結構冷や汗ものなのだが。
だが、詫びたりする気は毛頭ないし、嘘をつく気もないので、

「……試合は見ているだけでも、戦えるだろ。臨場感ってやつだ」

と、いつも思っている本音を言った。
大会が始まって以来、見ているだけで戦っている自分がいた。
おそらく自分だけではない、他の連中も、そして蔵馬もそうだろう。

分かっていて、あえて言った。
深くは考えずに……数秒後、それを少し後悔したが。

「そうだな。幽助の試合も楽しみだし……ところで見に行かないのか?」
「何を」
「躯の試合。試合は見ているだけでも、戦っているようなものなんでしょ?」

またしても揚げ足をとられた飛影。
何を言ってもとられているような気がする。
目覚めた時、いつも彼がいるのと同じように、何か話せば必ず余計な一言がついてくる。
むかつくが、正直嫌ではなかった……。

 

 

「……今は乗り気じゃない」

それだけ言うと、飛影はベッドに横になった。
乱暴に毛布をひっかぶって、顔を蔵馬とは反対側へ向ける。

「もう一回寝る」
「そう」
「……貴様も寝てろ」
「そんなに眠くないけど」
「横になってろという意味だ。動かんだけでも、回復は早いだろうが」
「はいはい」

クスッと笑ってから、布団をかけなおして、目を閉じる蔵馬。
そのまますぐに、すうっと深い眠りに落ちてしまった。
本人は眠くないと言っていたが、体はまだ疲れているらしい。
だが、次に起きた時には完治しているだろう。

 

蔵馬の小さな寝息を聞きながら、飛影もそっと目を閉じた。

「そこにいろよ……」

そう呟いて……。

 

 

目覚めた時、蔵馬はいつも飛影の側にいた。

だから怖いとも思う。
もし側にいなかったらと思うと……。

だからいて欲しいと思う。
例え、からかわれても、子供扱いされても……。

 

しかし、きっと側にいるだろう。

彼ら2人は……。

これからもずっと……。

 

 

〜作者の戯れ言〜

キリ番、初めての小説リクエストでした!
リクエストは「飛影と蔵馬友情」。

えっと……こんな感じでよかったでしょうか?
何かめちゃくちゃですが……(滝汗)
彼らの友情ってよく書くけど、でも何かいつも蔵馬さんばっかり有利だな…(好きなんです、そういうの/こら!)
飛影くん、ゴメンね!