序章 <ゲームの世界へ…>
……その日、幻海の寺はいつもに増して賑やかだった。 螢子の大学合格祝いと称して、みんなで酒盛りをしていたのだ。 幽助・桑原はもちろん、蔵馬と飛影も祝いに来てくれた(飛影は蔵馬に引っ張られてだが…)。
「螢子ちゃんの合格を祝って、かんぱ――――い!」 皆でわいわい騒ぐのも久しぶりである。
「あ〜、喰った喰った」 「あ?これ何だ?」 ふと桑原の瞳に飛び込んできたのは、ゲーム機にセットされたままのカセットだった。 「ばあさんのゲームだろ?」 「ああ、それはわしのだ」 残っていた饅頭を食べながら言ったのは、コエンマだった。 「コエンマの?おめーのゲームやるのか?」 霊界にもゲームがあること自体に驚いている幽助だが、それ以上にコエンマが300年も連勝し続けているということに彼は一番驚いていた。
「でもこのゲームはRPGじゃないですか?」 タイトル横の小さなマークを目敏く見つけた蔵馬が言った。 「鋭いな、蔵馬。実は最近、ゲームをするよりも創ることに凝っておってな。まあ、RPGはこれが初めてだ」 「言うよりもやらせろよ。百聞は一見にしかずって言うだろ。電源入れるぜ」 コエンマの制止も聞かず、幽助はスイッチを入れてしまった……。
「ああーー!!何ということをしてくれた!!」 「はあ?たかがゲームに何興奮して……なっ!」 突然、ゲーム機から黒い煙があふれ出してきた。 「コエンマ様!なんですか!?今の叫び声…」 コエンマの絶叫を聞きつけてきた螢子・静流・雪菜、挙げ句の果てにはプーまでに捕まってしまった。
「コ、コエンマ!」 「……このゲーム…電源をONにすると、プレイヤーの魂を身体から強制的に離脱させ、ゲームに引きずり込むものなのだ。しかも中で死ぬと、外でも死ぬ…」 かなり無茶苦茶なことを言ってくれるコエンマ。
「じょ、冗談じゃねえぜ!!何で、そんなやべえゲーム創ったんだよ!?」 ぎゃんぎゃん叫ぶ幽助と桑原に、さらっと突っ込みを入れたのは、もちろん蔵馬だが…。 しかし、コエンマも負けずと反論! 「これから安全装置つけようと思っていた所なんだ!死んだ場合の処置用のを!!その前にスイッチ入れたのは、何処の誰だ!!?」 「…浦飯〜」 「あのな〜!!!(怒)」(×8)
そうこうしている間に…一人また一人と、肉体から魂が摘出されていく……。 「螢子!!ぼたん!!バーサン!!」 女性軍は皆、魂のない人形と化してしまった……。 「くっ…コエンマ!とにかく主人公が全クリアすればOKなんですよね!誰が主人公になるんです!?」 この期に及んでまだ喧嘩をしている幽助と桑原…。 コエンマは呆れつつも、とりあえず返答した。 「……はっきり言って分からん!!このゲームの中で、誰がどんな役割のキャラクターになるかは決まっておらんのだ!!それぞれの特性なんかが関連してくるとまでしかな!!」 ……こんな無茶苦茶なゲーム、他にあるだろうか…やはり、ある程度選べる天沼の能力よりも数百倍厄介であった……。 「しかし、その役は嫌でもやり通してくれ!!生きて帰るためだと思って!!健闘を祈る……」 言いかけたコエンマの魂が摘出され、その直後、幽助や蔵馬たちもゲームに呑み込まれてしまった……。
……こうして、ゲームの中に引きずり込まれた幽助たち。 果たして、無事、元の世界へ戻ることが出来るのだろうか……。
序章終わり
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