そして、ようやく辿り着いた魔王の城。
そして、ようやく辿り着いた魔王。
……蔵馬の予想通り、プレイヤーの大半がボタン連打で台詞を早送りせねば気が済まないような長々しい口上の後、ようやく戦闘が始まった。
「一発で片づけるぜー!!」
幽助のかけ声と共に、全員が現段階で使える呪文を飛ばす。
幽助はレベル150の呪文(160以上のは言えなかった…)。
桑原は恥を忍んで、ついでにあまり練習するヒマがなかったため、決して上手いとは言えない、PL学園校歌(熱唱)。
蔵馬は百人一首の逆さ読みを一気に80題ほど(高校の古典の授業で暗記したため、逆さ読みだろうが、全部言えるらしい)。
飛影は何とか必死に言えるようになった『バスガス爆発バスガス爆発』。
ぼたんは必死になってオジャパメンをフルコーラス……しようとしたのだが。
「……おい、もう終わりか?」
「マジで一発でカタついたのか?」
「まだ20題ほどあったのに」
「……」
「ええー、じゃああたい出番なし? フルコーラス途中までやったのにー」
そう。
魔王は想像を絶するほど、弱かったのだ。
仙水も言っていたが、レベルを最高まで上げたところで、こっちはダメージを受けなくとも、向こうも一発二発では倒れないのが筋というもの……。
なのに、冗談抜きでワンターンで片づいてしまったのである。
「……」
「……」
「……」
「……」
「……とりあえず、聖者の書とやらを探そうか」
「お、おう…」
蔵馬の声に全員が動き出した。
もはや魔王のいた位置には何もないが、しかし帰れる様子もないとあれば、聖者の書が必要なのだろう。
もし見つけても帰れなければ、神殿へ帰還するまで終われないと蔵馬は踏んでいた。
しかし……そんなに甘いものではなかった。
いや、帰る帰れないなどではなく、このゲーム自体が……。
「あ、あったよ。聖者の書」
「マジ?」
玉座の奥に隠されるように取り付けてあった本棚から、一冊の本を引っ張り出すぼたん。
全員が目撃し、ひとまず触れてみても、特に変化はない。
「……何もおこらねえぞ」
「どうやら一度神殿へ戻るしかないようだね」
「ふ〜ん。ねえ、聖者の書って何が書いてあるんだろうね?」
「大したこっちゃねえだろ。世界平和が何とかじゃねえの?」
「案外白紙だったりしてな」
「あはは、まっさかー」
言いながら、ぱらっとページをめくってみるぼたん。
それはあくまでも冗談半分だったのだが……。
「……何だ、これ」
「……そのまんまだろ」
「……でしょうね」
「……とにかく」
「……書いてあることは」
「ゆるせねえーーー!!!!」
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「よお。バカ王子、元気か?」
『久しぶり、コエンマ。どうだった? 最新のゲームの具合は。今度子供相手に使う予定なんだけど』
「やっぱり最初に説明書くらいあった方がよさそうだぞ。蔵馬がいたから、まだよかったが。子供だけだと、無理がある」
『そうか。じゃあ創ろうかな』
「そうした方がいい。ああ、それから変身はずっとしているのもあれなんじゃないか? やっぱり一定時間だけ…とか。あいつらだから、何とかなったけど、相手は人間の子供なんだろう? 疲労回復させないと、なかなか進まないぞ」
『なるほどなるほど』
「スカイボードはやっぱり便利だけど…あれだな」
『移動が速くなりすぎ?』
「そうだ」
『じゃあ、結構難しいイベントクリア後にしないとね』
「神殿もいいけど、子供相手なら王城の方がよくないか?」
『やっぱりそう思う?』
「神聖なイメージ持ちにくいぞ。お前の趣味じゃ」
『あはは、そうかな?』
「後、やっぱりボスキャラはもっと強くした方が…いや、知能が高い方がいいんじゃないか? レベルを上げるだけ上げられたら、終わりだってことも分かったし」
『そうかー。実は魔王は作りかけなんだ。人工知能を改造したやつ』
「あ、それよさそうだな。ところで、例の聖者の書って何にしたんだ?」
『ん? あ、あれね。そのうち分かるよ』
「? 何かよく分からないが。じゃあ、頑張れよ」
『お互いにね』
「は?」
『じゃねー』
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「何のことだ?」
パソコンを前に、首をかしげるコエンマ。
相方は既にこの二人専用チャットから『退室』しているから、もう当分聞けないだろう。
しかし、もっと速く気付くべきであった。
「聖者の書」が実はこの相方との交換日記で、散々幽助たちの愚痴を書き込んでいたことに……。
そして、それを全て読んで激怒した五人がすぐ背後に迫っていたことに……。
終
〜作者の戯れ言〜
RPGにありがちなパターン揃えてみました。
一部間違いなどありそうな気もしますが…(汗)
服装、魔法使いとか剣士とかにしようかと思ったんですが、しかしそれではみんな乗り気になってしまうかも…いや、ならないか?(悩)
最後にコエンマさまと通信していたのは、もちろん、かの宇宙一頭の切れるバカ王子です。
コエンマさまも閻魔大王の息子なわけだから、王子繋がりで、友達だったりしたら楽しいだろうな〜と(笑)
彼好きです。あそこまで、人の迷惑を考えずに行動すると、逆に清々しい…。
周囲に殺したいと言われつつ、絶対に殺されないのが、すごいし……とにかく絶対に敵には回したくない人ですよね。