<All Night
Paradise> 3
「やあ、おはよう」
「……」
幽助たちが目を覚ました時、蔵馬は壁に寄りかかって、本を読んでいた。
右側に流れたページ数を見ると、大分読んでしまったようである。
『指○物語』の全話合計くらいの厚さなのだが……流石は蔵馬というか。
だがそれは、あれからどのくらいの時間が経っているのかにもよるだろう。
「……今、何時だ?」
「8時だよ。朝の」
「は?何だ、あれから1時間かよ」
「意外だな。結構寝た気がしたのによ」
「……結構どころじゃないよ」
「は?」
「73時間寝てた」
「何ーー!!?」
思わず飛び起きて絶叫する、幽助&桑原。
その声に起こされたのか、幽助の部屋から飛影もやってきた。
彼の方は、まだ寝ぼけ眼で眠たそうだが……現に居間に入った途端に、またソファに突っ伏して寝てしまった。
だが、そんな飛影には気付いていないのか、
「73時間って……あれから2日も経ったのか!?」
「幽助…君の1日って何時間だよ。3日だよ、3日」
「3日ーー!?余計に多いじゃねえか!!」
ぎゃーぎゃー叫びまくる幽助たち。
別に幽助はどれだけ寝ていても普段と変わらないし、桑原も3日くらいなら休んでも問題ないだろうから、叫ぶ必要はないと思うのだが……。
眠っていた3日分の体力が、一気に燃え立ったのだろう。
彼らの叫びは当分止まりそうになかった……。
「でもまあ。とりあえず引き分けだな、全員7時まで起きてたから」
数時間後。
ようやく叫ぶのをやめた幽助が、満足そうに言った。
勝つことはなかったが、とりあえず負けることもなかった。
あれだけの睡魔に耐え抜いたのだから、敢闘賞ものである。
試合には負けたが、勝負には勝った……引き分けでも充分だと、桑原ともども頷いていたが……。
「何言ってるのさ。3人とも負けだよ」
「……はい?」
蔵馬の一言に、凍り付く幽助たち。
今、何か……ものすごい言葉を聞いたような……。
瞳孔が開いたまま、まぶたが降りず瞬きもしない時間が数分続いた。
まるで3日前と逆である……。
そんな彼らの思惑とは裏腹に、蔵馬はようやく読み終わった本を閉じ、にっこりと笑って言った。
「あの時計、5分進んでるじゃないか」
「ええーーー!!?」
「ええーって…言ったじゃないか、進んでるって」
「い、いつ……」
「1ページ目の10行目で」
「ま、マジで……?」
蒼白の顔に少しずつ色が戻ってきた。
感情の様も段々と戻ってくる……口の端が乾いたように持ち上がった、引きつり顔が…。
だが、蔵馬のからかいたっぷりの声が、それを崩してくれた。
「だから3人とも6時55分に寝たんだよ♪」
「サギだあぁぁー!!」
パタッ……
絶叫の直後、2人は再び夢の世界へと戻っていった。
今度、目覚めるのはいつだろうか……少なくとも、今日中でないことは確かであろう。
最も次に目覚めたところで、また倒れてるのは明白だが……。
そんな中、全てを見ずに、全てを聞かずに、ひたすら眠り続けていた飛影。
彼が真相を知るのはいつだろうか?
出来ることならば、一生知らないでいるのが一番だろう。
そう、出来ることならば……。
そして、それが無理であることは、自明の理である。
相手があの『蔵馬』である以上は……。
終
〜作者の戯れ言〜
久しぶりに、蔵馬さん一人勝ち小説です!
でもこれは結構オチがわかりやすかったと思います。
短くしようとしたから、かなりわかりやすく伏線貼ったし…。
しかし、「指○物語」全話合計くらいの本って……一体どんな本読んでたんでしょうね、彼は…(それより、手に持てるのでしょうか?)
それにしても……徹夜って大変なことのようですね(笑)
管理人は完璧な徹夜、まだやったことありませんけど(1〜2時間は寝るし)
ちなみに睡眠薬一瓶飲んでも大丈夫というのは、学校の先生から聞いた話で、本当に死ぬことは滅多にないそうです。
けど、覚醒する時、ものすご〜〜〜く気分悪くて、頭痛くて、身体だるくて、2〜3日は吐きまくるらしいので、試すのは絶対にやめてくださいね!!(あれで平気なのは、彼が蔵馬さんだからなので!)
というか……これはパラダイスか!?(おい)
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