第二十二部 〜 MURPHY'S GHOST (マーフィーの亡霊 または悲しきパンチングマシーン) 〜

 

 

 

 駒:(地図を見ながら)そーいえばそのサンドバックの所って

  どうやって行くの?地図だと出口に向かう一方通行道だけで入り口見当たらない完全な密室だよ

蔵:もうすぐ入り口に着きます。行けば判りますよ。

 

酎:しーっかしおでれぇたなぁ 死々若が善人になっちまうとはなぁ

蔵:善悪に特別な概念を持っている者ほど、性格が変わりやすいのかもしれませんね

凍:単なる偶然だろうがな、偶然にしても皮肉だ

駒:オイラ“中立”でよかった

 

 

死:皆さん先程から何をコソコソとお話していらっしゃるんです?

陣:聞かねでいいべ。

酎:つーかオメぇの事なんだけどな

死:? なんのことでしょう?

 

酎:あーもーいいっていいって。お そーいやぁ飛影のヤロ随分機嫌よかったな

蔵:鈴木不在でパーティのバランス取る為に盗賊を前衛に出したからね

 

駒:羨ましいよホント

酎:飛影にジャンケンで負けてひがんでんのかあ

駒:うるさいなぁ オイラだって戦いたかったんだい

 

陣:でもよ、オメめっちゃ器用だべ?今まで箱空けトチったの片手で数えられるぐらいだっちゃ

駒:そんなんで褒められても嬉しくないよ

 

酎:へっへっへ こいつ照れてやんの

駒:うるせーよっ!

 

 

 

蔵:っと 着きましたね

 

 

一本道の通路を真直ぐ歩いていたパーティが立ち止まる

通路の先が行き止まりになっている

 

 

駒:え?ここ地図だと行き止まり…れ?!

  こんな道地図にはのってないよ!!

凍:なんだこの道は、まるで空間が歪んでいるように見えるが…

 

 

 

 

蔵馬はそのまま『地図上の壁』へ向かってツカツカと壁の方まで進む

とあるところまで来ると溶けるように急に体半分が見えなくなってしまった

 

 

酎:お、おい蔵馬!?

蔵:(見えない壁に半分入りながら)さ 早く

陣:お、おう

 

蔵馬につづいて次々と壁を通り抜けるパーティたち

 

 

 

陣:ひゃー おっでれーたぁーって せまっ!

凍:小部屋に繋がる隠し通路になっていたとはな

蔵:正確には空間にひずみを作り別の場所へ転送させるワープゾーンみたいなものです。但し一方通行ですけど

駒:ほえ〜ほんとだ 壁が無くなってる

 

死:流石は蔵馬さん、博学な方ですね

蔵:ははは それはどうも

 

駒:ゲームで博学って言われても素直に喜べないよね

蔵:正直自慢できることじゃないよ

駒:ところで蔵馬、このゲーム詳しいけど、どんだけやりこんでんの?

蔵:一周しかしたことないよ。

駒:ウソォ!?

 

凍:地図によるとこの部屋の隣が件のモンスターのいる場所だな

陣:いよいよだな

 

 

 

 

六人がすし詰め状態の小部屋を出、隣の部屋へ移動

 

フードを被った人間型の大きな彫像が見える。

フードの穴から金色の光が漏れていて彫像にはさまざまな形の宝石がちりばめられている。

彫像の前には祭壇があり、新しいお香が焚かれている。

 

 

酎:うぉ カビ癖ぇ部屋

陣:風通し悪いだなぁ〜 換気しねぇと死ぬぞ

死:一体こんなところへなんの用があるのでしょうか

酎:だからオメぇのお陰で寄ったんだろ

  っとー こいつぁ大層な置物だな。お宝があちこちにちりばめてあるぜ。

 

凍:…うーむ、売れんな、レプリカだ

陣:おーい凍矢〜

凍:ああ すまん、こいつはいいお宝だ

駒:もう遅いって

 

蔵:では、イベントコマンド選択して探し始めましょうか

 

死:まさか皆さん墓荒らしの紛い事などやらかすおつもりなのでしょうか!?

駒:これイベントだから、ゲームの墓は暴く為にあるものだから

凍:身も蓋もないを言ってくれるな

 

蔵:鈴駒も大人になったね。じゃあ イベントコマンド選択しますね

 

 

 

⇒イベントコマンド (ピッ)

 

◎探しますか? ⇒はい ピッ

祭壇から煙りが噴出しマーフィーズゴーストが現れた!

 

 

駒:はやっ!まだ彫像に触ってもいないのに

凍:イベントコマンド選択しただけで調べた事になるのか

 

蔵:ゲームは殆んどがご都合主――

駒:もう…それは言わなくていい…

酎:泣きながら訴えなくてもいいだろオメ

凍:大人になったんじゃなかったのか

駒:ゴメン オイラには無理

 

陣:うっしゃ いっちょやったるべ!

凍:お前はいいな 単純で

 

 

 

みすぼらしい姿のモンスターと向き合うパーティ

不意にやつれたモンスターが微笑みを浮かべながらこちらに近づいてきた

 

身構えるパーティ しかしモンスターは笑っているだけ

 

 

駒:…ひょっとして――

酎:一発目でビンゴかよ

陣:いきなし友好的な魔物だべ

酎:まぁ 今回は好都合だぜ、とっととブッ倒す!

 

死:な・・・なんていういことを・・・!!

酎:いや、だから、これはイベントだからどーしてもやんなきゃいけないことなんだぜ!

陣:んだんだ、正義の味方は必ず通らにゃなんねー関所だべ

 

死:そ、そうだったんですか…!! 知らなかった…

陣:…いちいち疲れるべ

 

 

 

即座によたよたのボロ布を纏ったモンスターに身構える

 

酎:どう贔屓目で見ても弱そうだぜ

陣:んにゃ、油断は禁物  っ!?

 

 

ヒョォわっ

 

ゆらゆらよろめいていたゴーストが突然陣の間合いに入り腕を伸ばす

 

 

ぞくっ

 

 

酎:陣!

陣:うわっち!なんだべ今の、かすっただけなのにスゲぇしびれただ!

凍:だがHPゲージは2しか減ってないぞ!

陣:んだ?! ぜってーおかしいべ!

 

蔵:どうやら、痛みとダメージ(HPの減り)が全く一致していないようだ

酎:へっ 狂ってやがるぜここのシステムはよ

死:陣さん!回復は?!

陣:いらね 次はこっちの番だべ

 

 

ゴーストに突進する陣

二三太刀浴びせかけるがゆらゆらとかわされる

死々若、酎も加勢し切りかかるが、するりと通り抜け間合いから遠ざかる

 

 

 

陣:っっしょう!こんにゃろ!

酎:ちぃ かませ犬かと思いきやとんだ中ボスじゃねぇか!

凍:呪文で眠らせるか?

蔵:マーフィーズゴーストのレジスト率は結構高いんです。6〜7割は呪文が効きません。

 

凍:ならば3〜4割で呪文効くと言う事だな

駒:へへへ 凍矢もポジティブシンキングだね

蔵:今日は相当な長丁場になります。気が短いと持ちませんよ?

凍:じっとしているよりかマシだ。

 

眠りの呪文の詠唱に取り掛かる

 

ガクン

 

 

 

陣:おぉ!効いたべ!

酎:よっしゃ今のうち!

死:何をやっているんです!眠っている敵に太刀を浴びせようなんてそんな卑怯な!

酎:だぁ〜もう うっせぇぇぞぉ!おめーは!

 

パチ ガバッ

 

陣:げ、起きた

酎:ほらみろオメーのでけぇ声で起きたじゃねえか!

駒:今の十中八九酎の声のおかげだって

凍:・・・・・・・・・・

蔵:ま こんな時もありますよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのころ酒場

 

警備兵:俺は俺なりに頑張ってやってるし、考えて仕事してるんだけど

     そんな要求の仕方は無いんじゃないかと思うよ

     国王陛下だって自分は口ばっかりで、楽なことしかしてないくせに

     何で人にあそこまで無茶なこといえるのか不思議でしょうがない。

鈴:はぁ それはそれは…

  (そういえば今日の食事当番飛影だったな不安で一杯だ)

 

 

NPC相手に世間話をしていたら何故か愚痴を聞くことになった鈴木が

夕食の心配をしておりました

 

 

 

 

 

 

それから5分後の幽霊部屋

 

 

酎:おっしゃぁ!片した!

陣:はひ〜 思ったより手ごわかっただな〜

蔵:死々若、どうだい様子は?

死:なにがでしょう蔵馬さん?

 

凍:戻ってないな

蔵:気長にやるしかないですね。もう一度オブジェクト調べましょうか。

 

駒:えーまたやるのーアレ

蔵:寝ててもいいですよ

駒:絶対にヤダ

酎:ムキになってんなオメー

陣:でもよ、思ってたより歯ごたえあんべ?これなら何時間でも楽しめそうだ。

 

 

 

一時間後

 

 

 

陣:飽きた――!!

駒:そりゃーあんだけ同じ事くりかえせばねー

酎:オメぇ強情っぱりだぞ!とっとと悪人に戻らねぇか!

死:あの皆さん…なんでそんなに怒っているんですか?

蔵:酎、今の死々若には罪はないから落ち着いて

 

 

 

談笑していたパーティ、突然扉が蹴破られた

 

駒:モンスター!?

蔵:いや!モンスターなら自分から扉を開けるなんて出来ない!

 

 

 

桑:よっ!

陣:でたぁぁあああ!!!

 

凍:落ち着け陣、桑原だ

桑:ナニが『でた』だよ(怒)

陣:あ、う、なんでもねぇべ

 

蔵:随分早く戻れましたね。

コ:まあな

桑:ワリィな 迷惑かけちまったみたいでよ

 

コ:支払った犠牲のほうが大きかったがな

陣:どういう意味だべ?

蔵:まさか…

 

 

 

 

飛:オッス!皆!元気だったかいハハハハハ

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

蔵:………………………………………

酎:っ…だっはははははははははははははははははは!!!!

凍:これは…

駒:ありえない!!ありえないって絶対!!

陣:キャラ違うとかそういう次元の問題じゃねー!!

 

酎:ひーひーひー…あーぐるじー、桑原、オメーよく平気だったな!

  オレならここに来る前に笑いすぎて酸欠で死んでるぜ!!

桑:コイツ引っ張ってくんのに手こずってそれどころじゃなかったぜ

陣:ほへ?

 

桑原が扉の影に隠れながらこちらを伺う人影を指す

 

 

 

幽:あ… あのっ… 僕…そっちに行っても…大丈夫ですか?

 

 

 

凍:おいおい

酎:ぷ…くくく… がはははははははははははははははは!!!

  やめろオメーらがははははははは!!!オレを笑い死にさせる気か!!

陣:ははははははもーどーでも良くなってきただ

駒:幽助がシャイボーイになってる

 

 

 

コ:なにせ桑原強情でな。次々性格変わる中、俄然悪人のまま頑張り続けおって

桑:オレのせいじゃねーぞ システムのせいだ

蔵:何はともあれ大変でしたね、師範もお疲れ様でした

 

 

幻:もう危ないトコ行かないよね…とっても…ひっく…怖かったよぉ…

 

蔵:・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

コ:性格変わった途端、見た目どおりに中身まで幼児化しおってな

  いやー ここまであやして連れてくるの大変だったんだぞ

桑:コエンマが中立で助かったぜ。

コ:なにせ幽助はかくれんぼするし幻海は泣きだすし。

  一番マシだったのが飛影だったんだが、戦闘には非協力的だし…

  桑原が戻ったおかげで九死に一生だ。

 

桑:戻った時は死ぬほどビビったぜ。

蔵:あまりにも混沌とした状況ですからね

  ところで桑原君、性格変わっている時の記憶はある?

 

桑:それがよー 断片的にしかおぼえてねーんだよ

蔵:そうですか、それはよかった 本当に

コ:(これで戻ったとき記憶あったら現実戻ったとき火あぶりにされるな…)

 

桑:オレもう今日は城に帰りてぇんだけど

コ:ワシもここに来るまでに精根使い果たした。

蔵:いや、探索を続けましょう。鈴木の解呪費用稼がなきゃいけないし

  なにより、この混沌とした状況から抜け出さないと…

 

 

幽:そんな…人に暴力振るうなんて…僕にはできません!!

陣:いーからオメ物陰からでてこいっちゅーに!

幽:イタイイタイ引っ張らないで下さいよ… 乱暴なのは嫌いなんです!

陣:黙れコラ!言う事きけっちゃ!!

酎:だっははははは!!!やめろお前らまじで死ぬ!!

 

幻:うわーん!うわーん!お家にかえりたいよー

凍:こ、怖くないから…な?…おい、鈴駒、なんとかあやしてくれ

駒:だからなんでオイラに振るの!

凍:こういうのは同年代くらいの子供同士が一番だろう

駒:それどういう意味だよ!!

 

飛:あれー蔵馬さん、今日はまだどっかいくんっすかー?

 

 

 

蔵:……いや、もう今日は帰りましょうか。