かうんた1. 春日和
2. 見つけた
かくれんぼ。
おひるたべおわってから、やりはじめて…。 ながい、…ながいあいだ。 めぐむたちはもう、かえっちゃったのかな…?
まだ、さがしてくれてるのかな………?
・・・・☆
皿屋敷第2公園。 これがまた、広い。 けれど。
今日は、いい天気だ。 「………」 そんな少し遠くにある桜並木を見て、寵はふっと思う。 「…さくら」 急に桜といわれて、蓮と蛍明は同時に疑問符がとんだ。 「けいあ、れん。さくらのしたって…さがした?」 訊かれてふたりは顔を見合わせて、蛍明が先に口を開いた。 「いや…」 言葉足らずの蛍明をつけたすように、蓮は言う。 「うー…うん。そう、だよ…ね?」 自分もそう思って、木の下は探しにもいかなかったのだ。 「いる…かも」 言い終わるかどうかで、寵は桜並木にむかって走りだしていた。 「え? ちょっ、…めぐむ!」 慌てて、蓮は寵を追いかける。蛍明もそれに続く。 「いるのか?!」 前を走る寵に、蓮は訊く。 「たぶん」 あまりアテにならないような返事をしといて、寵はなんとなく確信はしていた。 上にいる。 この桜並木の、坂の上に。 そこに、碧はいる。
坂の上の、大きな桜の木。 傍までいって、寵はうしろから碧の頭に触れる。
「 あお! みつけた! 」
(…え☆) 一瞬、3歳と今の寵が重なった。 「やっぱ、ここにいた」 そんな事をぼやいて、寵は碧の隣にかがむ。 「やっぱ…?」 さもあたり前かのように言うそれに、疑問符がとぶ。 「碧。暇だから、勝負しに来てやった」 女らしからぬ口調で、不敵に蓮が笑う。 「…無言のケンカか」 今の状況を正確に言う蛍明に、寵が苦笑する。ぼそ…、と蛍明がもう一言。 「ケンカするほど、仲がいい…と」 そんなつもりは碧にはない。 「おれは構わないが?」 そう思われても、蓮は別に悪い気はしないらしい。 「碧、落ち着け」 なんかその感じが、3歳の頃のあの時と…重なる。 「ん?」 ぽかん、と・碧に凝視されて寵は首を傾げた。 「けど別に、蓮が嫌いなわけじゃないだろ?」 そんな事を寵は言ってきた。 「…確かにそうだけど」 嫌いではない。 立ち上がる碧に、寵は少しいじわるそうに。 「妥当に…、悪友ってトコか?」 …友。……というかはよく、わからないが。 「そうだな。そんなトコにしとく」 それが近いだろう。 「なに、ぼそぼそ話してるんだ?」 何もないように、寵は蓮に振り返る。 「腹…、減ったな」 独り言みたいに蛍明が呟く。 「4時近いもんな…」 空模様を見て、寵がぼやく。 「何か、食うもんあるのか?」 寵の肩に碧が手を置く。 「何か作れよ」 続けて蛍明も寵を見る。 (だから、なんで、……) そこまで思って、寵はあきらめた。 「…わかったよ」 溜め息ひとつついて、肩を下ろす。 少し前を行く蓮と蛍明の後を、碧と寵が続く。 「……なぁ、寵」 くだらない事だとは、わかっているが。何となく…碧は訊く。 「なんで…おれがここにいる…って、思ったんだ?」 さらりと、そんな答えが返ってきた。 「あの時も、特に春の風が感じられるトコにいたもんな」 確かに…、そうなんだ。 結果。 緑の葉が、何枚か落ちてくる。 「『神桜(かみざくら)』だったら、桜吹雪だな」 落ちてくる葉を眺めて、寵が言う。 (あれ……?) ふっと、疑問がとんで碧は首を傾げる。
(春が好きなこと。寵に言ったっけ………?)
先刻(さっき)まで頭上にあった木は、もう後ろの方にある。
かうんた1. 完/ 2003,11.25−
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